内容説明
日本舞踊の舞台化粧師・綱木連太郎が、伝統芸術の世界につぎつぎと起こる殺人事件の謎に挑む連作ミステリー。
目次
春怨
笛を吹墓鬼
ブランデーは血の香り
牡丹燦乱
消えた村雨
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪紫
53
日本舞踏の舞台化粧を専門とする顔師、網木連太郎が遭遇した5つの事件。事件で手に入れた顔のない人形「五郎」を通し、彼の深層心理は事件を問い掛ける。あやつり左近か(いや、五郎は「黒い仏」のくろみさまなイメージだけど)!皆川さんの文体や小道具もあるけど家の内紛やらの醜い部分をさらっと抑えてるおかげか、全編やるせなさを感じながらもしんしんと雪が降り積もるイメージの中読了。個人的には「春怨」「ブランデーは血の香り」「牡丹燦乱」が良かった。2022/11/05
あかぽち
7
舞台化粧を専門としている顔師・連太郎。彼の周りで次々と奇怪な事件が起きる。邦舞の世界の裏事情も書かれていて面白い。妖艶で不気味でもある短編集に、美青年の友人。とてもお似合いです。2016/04/25
二笑亭
6
古い人形・五郎と対話する事で思考を整理する“顔師”(邦舞の化粧師)、綱木連太郎を一応の探偵役にした5作の短編。これまで読んだ皆川博子作品に比べると若干の物足りなさを感じてしまうけど、人形の設定、連太郎と舞踊家の鴻助の関係性、やるせない事件の背景なんかは皆川博子作品らしさに溢れている。派手なトリックがない分、加賀友禅・手筒花火・唐子人形・古城・鏡獅子と道具立ては凝っていて、犯人の恨みは深い。一番のお気に入りはやはり「牡丹燦乱」だが「春怨」も捨てがたい。2022/03/30
tokyo-zodiac
3
舞台化粧を生業とする”顔師”綱木連太郎が遭遇する五つの事件(「春怨」「笛を吹く墓鬼」「ブランデーは血の香り」「牡丹燦乱」「消えた村雨」)。最初の事件(春怨)では単なる一傍観者だった連太郎だが、二編目以降から探偵的役割を担う。最初の事件で手に入れた、顔のない古ぼけた人形”五郎”に潜在意識を投影させて真相に到るという推理法は、某氏の腹話術人形シリーズの先駆けとも云える。目新しいトリックこそないが、顔師ならではの気づきが謎解きのきっかけになっている「ブランデーは血の香り」「消えた村雨」が印象に残る。2014/04/09
影実
1
舞台化粧を専門にしている「顔師」連太郎が遭遇する事件を描いた連作短編集。『春怨』『笛を吹く墓鬼』『ブランデーは血の香り』『牡丹燦乱』『消えた村雨』の5編を収録。五郎という人形に話しかけることで自分の思考をまとめるという設定が強く印象に残る。後味が悪いというか、やるせない事件が多い。派手な(突っ込みどころがあるような)トリックが無いことがそれを際立たせている。特に『ブランデーは血の香り』が好印象。2017/01/07