感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
8
何やらクトゥルフが出てきそうなタイトルだが、主役は戦間期の豪華客船・浅間丸。同じ著者の平賀譲伝と同様、地味な主題を通じて時代背景を精密に描き出す骨太なドキュメンタリーである。何よりも、当時の船舶の宿命として否応なく戦争に引きずり込まれていく、胃がヒリヒリするような焦燥感。英海軍によるドイツ人乗客拉致事件や米国の日本資産凍結を受けての航路変更、日米交換船、コレラ騒動、そして南方輸送から戦没と、そんじょそこらの軍艦にも負けないドラマに満ちている。2023/08/29
