感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
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「歴史家の仮定した地図の上にではなく彼が実際に生きていた現実の上に、どの様な傷を残して死んだか描き出すこと」(中山省三郎あて「私信」)を目指して『生活』は書かれた。 ロシヤの文学が特異なのは歴史や哲学が抑圧され、それらを文学で表現するしかなかったからということ、当時様々なグループが反政府活動を企図していたこと、また、文学の伝統が無いロシヤに西欧の文学が盛んに翻案されていた時期にドストエフスキイはシベリア流刑にありそれらに直接の影響を受けなかった、など、ドストエフスキーの作品の土壌を知ることができた。 →2023/03/25
タロウ
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元々「作品」の白痴論が凄かったので「生活」を読むことに。つまりシベリア流刑地でただ一つ許された書物、聖書を読み耽り、生きたキリストを追体験したドストエフスキーが、キリストを模して白痴の公爵を書いたというところ。「生活」は、小林がドストエフスキーを思い出して追体験しようという、とんでもない試みをした本。ルーレットに明け暮れた実生活と、白痴や悪霊などの思想。相容れないものが一つに収まっているドストエフスキー。小林のよく言う、思想と実生活は相容れないという主張をまさに地で生きていて、その主張がよく理解できた。2020/12/13