内容説明
日本の芸術の、ひいては精神の抑の母胎は縄文です。だが、弥生に征服されて歴史の地底に埋められました。その上に近代化が行なわれました。それが、今日の日本の心の衰頽を招いたのです。しかし、闇の中の伏流水となって、縄文の祈念は流れ続けてきました。時に、それは歴史の上層に縄文の虹を噴上げました。その虹を見つめて、日本人の愛は何であるのか、日本人の未来は何であり得るのか、それを探り出そうとするのが本書です。
目次
1 はじめに―国の記憶とは
2 富士山の謎―だれの山なのか…
3 縄文教―順照射の試み
4 蝦夷の顔―亜弖流為
5 細道の奥に枯野―芭蕉と陸奥
6 祈りの造型―縄文の神と白鳥伝説
7 五重塔から天守閣へ―聖徳太子と信長
8 バサラの花―中世に噴出する縄文
9 中間表情の鎮魂―縄文のデカルコマニー
10 縄文の子孫たち―現代作家・詩人の場合
11 終りに―おはよう縄文
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yusuke Murakami
2
日本美術会と歴史に無視された縄文を様々な作家の作品や歴史的な建造物や考古学的視点から読み解き再評価しつつ詩人である著者の想像力からなる考察をふんだんに交えた一冊で、専門家の文献では無いので正しいかどうかは置いておいてその想像力には圧巻させられる。 また自分が東北人なので東北との関係性やルーツの話が多かったので興味深かったが、古文や昔の詩からの引用が多く知識の無い自分は少し読むのが辛いところも多々あった。だが全体を通してロマンがある内容が良かった。 正統な縄文後継者である宮沢賢治も何冊か読んでみようと思う。2021/05/05
takao
1
ふむ2022/08/08
くにお
0
縄文土器や土偶の文様を縄文時代の「ことば」、宗教と捉え、弥生に滅ぼされてもなお日本史に連綿と受け継がれている縄文人の魂の系譜を描く。蝦夷の英雄阿弖流爲に流れる縄文の血。芭蕉が旅の中発見した異国、縄文。五重塔が示す縄文的な天への祈り、その上昇感。能面や仮面に表れる生と死の境界に属する土偶的中間表情。現代における縄文教の正当な継承者、宮沢賢治。少しの考古学的考察と、詩人の空想力で、「日本的」とされた美の歴史を縄文教の血脈として見事に描いている。勿論アカデミックな裏付けが取れる話ではないが、詩人の想像力に脱帽。2012/05/03
金木犀
0
1991初版 3刷2009/05/15