内容説明
溌刺と欲望のおもむくままに生きてきたウサギも、すでに中年。胴回りの太さが気になりだし、鏡を覗くこともついぞなくなった。だが、ウサギは今や金持なのだ。『帰ってきたウサギ』では、ウサギはライノタイプの印刷工として働いていたが、その業種が不振になった時期に、うまい具合に義父が死んでくれ、義父の自動車販売業を受け継ぎ、ちゃっかりそこの経営者におさまってしまう。自動車業界は、第一次石油危機に見舞われ、燃費の悪い大きなアメリカ車が敬遠され、日本の車が順調な売れ行きを示している。ウサギは金持なのだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
56
アメリカ経済が不調とは裏腹に、トヨタ車を売り、インフレによる金の高騰の中での金売買で裕福になっていくハリー夫妻の姿は、当時のアメリカ中流階級の一つの典型か。その中流階級の俗物的な金満生活をベースに、ハリーとネルソン父子の微妙な関係性が描かれている。金持ちになっても、ハリーは自分勝手で優柔不断で頑固。ただ、ハリーに金銭的な余裕があるだけに、前二作ほどの息苦しさはなく、読み辛くはない。2016/10/18
田中
18
1979年「石油危機」によりガソリン不足。民主党カーターは現職のフォード大統領を破ったけど、どうも彼の政策はパッとしない。世の中は不景気だ。そんな中「ウサギ」は義父の会社を引き継ぎ、トヨタの専属ディーラーになり儲けている。「燃費」の良さが売りのカローラ。体の小さい民族のコンパクトカーとは偏見だと思うけれど。「日本車」に席捲されるアメリカ産業界は曲がり角。ウサギは収入が増えゴルフを楽しみ余裕だ。が、義母との同居は居心地が悪い。嫁とはまぁ上手くやっている。大学生の息子は学校が嫌いのようだ。家庭劇は続きます。 2017/11/29
ヘラジカ
8
個人全訳版で読了。2016/10/15
ひと
6
ウサギ(ハリー・アングストローム)シリーズ4部作のうちの3作目。1980年のペンシルヴェニア。ハリーは義父の会社を受け継ぎトヨタの車を売る会社の社長になっていた。実家に帰省してきた22歳の息子ネルソンは大学を辞めて結婚するという。一方で車を見にきた青い瞳の女性は、かつて付き合っていた女性と自分の子どもなのか…この頃から日本の車産業がアメリカの生活に浸透している様も分かることも面白いです。2025/07/26
Э0!P!
5
「金持ちになったウサギ」なのに、始終衰退を感じさせてくる。体と気力の衰退に悩み、醜聞は世代を超えて繰り返されようとする。日本に通貨競争で負けかけ、トヨタが自動車業界を席巻。日本の黄金虫が畑を食い荒らす。石油価格は中東の思うがままだが、アメリカ国内は足並みが揃わない。強き(トヨタ)に阿って金儲けし、買物のために製品情報を読み漁るお手本のような資本主義者仕草をどれだけ尽くしてもnot enoughなのだ。ネルソンはネルソンで人生観を揺るがす危機を迎えているのに梲があがらないウサギ。そのままでいいのか、ウサギよ2024/07/11
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