出版社内容情報
音楽、映画と多彩な分野で活躍する著者の作家生活20周年記念作品。
家に若い男が出入りするようになって、妻が作るスープの味は何故か濃くなった。彼はもしかしたら、妻の恋人なのかもしれない。褐色の肌の美しい青年が、妻を、娘を、息子達を虜にしていく。そして、何もかもが変わってしまった――。揺らめき、変容していくある家族の姿を描き、いち早くフランス語版刊行も決まった話題作。
内容説明
「あんたは自分の幸せを呪って、それを壊したいと願いながら生きてきた。俺はあんたの望みを叶えるために、ここにいる」―父も、妻も、娘も息子たちも、さらに愛犬までもが、褐色の肌の美しい青年の虜になり、そして、家族のすべてが変わっていく―。フランスSeuil社より仏語訳刊行が決定。作家生活20周年記念作品。
著者等紹介
辻仁成[ツジヒトナリ]
1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞、97年『海峡の光』で芥川賞、99年『白仏』フランス語版で同国のフェミナ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スノーシェルター
8
謎...。2011/12/25
acesmile@灯れ松明の火
8
短編集なのかと思いきや、オムニバス形式な感じの不思議な一冊。最初の2話を読んだ限りでは短編集だと思ったが読み続けていくうちにそれぞれが「1話」ではなく「1章」なのだと気づく。全部読み終わってから改めて各章を読んでみると何気ない描写がそれぞれの布石になっているのがわかる。「ダリア」の存在は人間の思っているほど安っぽい存在でなく、なにか人間の想像のつかない存在で神秘的だと思う。最初のうちは人間を虜にしてしまうダリアに対し敵意も感じたが、存在意義が理解できる様になると哀れとも感じてしまった。2010/01/31
やーるー
7
褐色の肌の青年ダリアと、ある家族にまつわる連作集。解説では生と死をテーマにしていると書かれてたけど、人間の業というか欲をテーマにした作品かなと感じた。少し難解だった…。2013/11/12
あつひめ
7
闇の中の歯車が動き出してしまった。家族みんなが怯え、不安、憤り、欲望・・・を感じながらも目をそらすことができない。どんどん深みにはまっていく家族をただドキドキしながら見つめている自分が大きなお屋敷の窓辺から覗いている。ダリア・・・あなたは何者だ。なぜ今になってここに現れた。2009/12/12
mikea
7
ダリアを取り巻く連作短編。人間の業というのか、持っている性質をダリアという存在が暴き、崩したり、つなげたり。生きている自分は確かなようで確かなものではない・・・、ダリアによって、確認できる。独特な世界観がありました。2009/11/16