内容説明
強打をうたわれた元東洋ミドル級チャンピオンが四年ぶりに再起する―栄光を夢見るボクサー、手を貸す老トレーナー、見守る若きカメラマン、プロモーターとして関わる“私”。偶然に出会った男たちが、いくつもの亀裂を乗り越えて“一瞬の夏”を疾走する。第一回新田次郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たらちゃん
10
目を背けたくなる。ボクシングは命がけのスポーツ…スポーツと言って良いのか分からない位命がけの闘い。戦争でもないのに相手を殺さないと生き残れない。そう思わせる沢木さんの文に力があるのかもしれない。他の話なら大丈夫かな。ボクシングはもう読めません。2016/08/16
マックス
3
★★★☆☆元東洋ミドル級のカシアス内藤が4年のブランクを経てカムバックするまでをシリアスに描いたノンフィクションです。ジムの移籍、ファイトマネー、マッチメイクなどプロボクサーにとって意外に知られていない現実も書かれており決してボクシングが華やかなものではないと知らされます。プロボクサーとして食べていけるのはほんの一握りの選手だけであってほとんどは仕事をしながら両立しています。何度も苦境に立たされても一人のボクサーを追い掛ける作者の想いが作品から滲み出ています。2017/01/22
spokan
1
図書館本。熱い。1年間の厚みがまさに一瞬で無に変わる切なさに打ちひしがれる。「同じ」って書くの残酷だけれど、リアルだからな。沢木の奔走はすごい。2023/03/10
中川 勇也
1
★★★★☆ 一瞬で決着のつくボクシング競技の無地火さが印象に残った。ひたすら足掻いて、人として弱いところを持ったまま戦い続けた内藤が哀れであり、でも人間って誰しもこのように少なからず無様に生きていくものなのかもしれない2021/07/15
bori
1
元東洋ミドル級チャンピオンのカシアス内藤の再起をかけた戦いを描いたノンフィクション。興業における「お金」を巡っての駆け引きとボクシングだけでは食べていけない現実的な収入(お金)の問題が生々しく描かれている。▼本書で描かれたラストから20年以上経った2005年、エディさんとの夢だった自分のジムを持ち、今年2月に御子息を日本チャンピオンにされた。物語の続きにも注目。2014/06/22