感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mayu
10
これもキーンさんの本に出てきた作品。能の解説本みたいなものをイメージしていましたが、能を現代劇に翻案したものだったんですね。三島さんの著作は久しぶりだったので、最初の邯鄲の冒頭がいかにもって感じでわぁ〜って思いましたが(笑)、すぐに引き込まれました。シェイクスピアとかもそうだと思いますが、観劇の楽しみというのはストーリーの面白さよりもむしろセリフの美しさや、人々のやりとりに見られる閃き、場景に浸るということかな、と思い、この作品もそういう所に惹かれました。これを踏まえて、原作を観たらより深く鑑賞できそう。2019/04/16
のれん
7
能に関しては最近勉強しだした素人だが、これほどまでに魔改造した翻案を能楽とたたき出せるのはまさしく熱意、いや狂気ある天才故か。 特に「邯鄲」と「道成寺」は元の能とは他に郡虎彦の戯曲をも元ネタにしているから分かりやすいといえば分かりやすい。 テーマを下敷きにした上で、それらの結末を逆にした芸術の精神を謳うパロディ。苦悩に敗北せず、さりとて忘却もせず希望を通り越した執念が花を咲かせる。 完璧主義という黄金が光った短編ばかりでした。好きなのは「綾の鼓」。こんな女には会いたくないが逢いたいものです。2019/05/18
amanon
4
タイトルに若干身構えてしまうが、能楽ではなく戯曲集と捉えて読んでも全然構わないのではないか?という気がした。ただ、解説で触れているように、本ネタを知っていると、より味わいが深くなるかとは思うが。中でもとりわけ能楽色が強く、かつ印象的だったのは、「卒塔婆小町」だったか。ゴミ拾いで食いつないでいる老婆と通りがかりの詩人との美しくも不気味、そして残酷極まりない恋の一夜。特にラストに醸し出される殺伐とした空気が強烈。後、狂女を囲った中年の女流画家を描いた「斑女」に底流する妖しい美しさにも惹かれる物を感じた。2013/09/09
あけの
3
綾の皷をしったのは高校生の時 同級生の友達が教えてくれた その内容がしみじみとせつなく感じられるようになったのは大人になってから 卒塔婆小町、良かった♥2021/07/04