内容説明
寝ても覚めても良寛さまのことばかり―。雪深い越後の山里に師弟の契りを結び、死が二人を分かつまで心を固く結びあった、70歳の老僧と30歳の尼僧。それは尼僧・貞心が、手ずからぜんまいの綿毛を詰めて色糸で編み上げた手毬を、撞れの良寛に贈ったことから始まった…。最晩年の良寛和尚の、生の彩り、魂の交歓を静かに鮮やかに描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
97
激しくも純粋な愛の物語に打たれました。40歳という歳の差がありながらも心を通わせていく良寛と貞心。師弟2人の関係が恋愛へと導かれていく様子はまさに燃え上がる炎のように見えます。恋に落ちるには歳は関係ないのだと思わされました。狂おしいほどの想いが体を貫いていくのを感じずにはいられません。2017/02/27
棕櫚木庵
22
中島みゆきの歌には,恋の歌のようでもあり,もっと別の遥かなる者,たとえば仏,を歌っているようでもある,そんな歌が多い.年若い尼僧,貞心の良寛への想いも,師への敬愛のような,恋のような.そんな貞心が語る良寛の晩年と示寂.手毬をついて子どもと遊ぶ春風駘蕩たる姿と,漢詩などに感じられる寂寞たる心像と.この二つが矛盾ではなく,“そして”で繋がっている良寛の姿が伝わってくる.謎めいた行商人佐吉の物語と,最後の方に登場する遊女きくも印象的だった.良寛の和歌・漢詩(訓読と和訳)がたくさん引用されている.→2021/12/09