感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
29
退院の日、ヒロインは医者から「一年は慎むように」と言い渡される。それがタイトルの意味。新幹線開通の年、独り身六畳一間のアパート(メェゾンと称する)は、大家さん宅と庭続きで、風呂なしテレビなし、新聞と牛乳が毎朝配達される生活。オーソドックスな文章で綴られた、自宅療養の日々がかくも芳醇なのは、細部まで行き渡る観察眼の故。いちいち素敵なんですよ。かつて自殺を思い詰め、遺書さえ書いたたことのある主人公が、男友達から「あなたは楽天的」と言われて、はて言われてみればと思い当たる。クスリ。素敵で楽天的な病み上がり。2020/09/15