出版社内容情報
写真家の専属モデルであり、私生活でも密かに同棲をつづける早希。だが人形のような無機質さを求める男との暮らしに、次第に蝕まれてゆく。ある日、その閉ざされた部屋から彼女を引き出そうとする翳りのない男が現われるが……。堕ちてゆく痛みと無垢な愛への希求、自身への冷徹な眼差し。クールさと瑞々しさを湛えた、新境地を拓く傑作長篇。
内容説明
迫ってくる体温を感じながら感じた、世界が変わっていくのを―。堕ちてゆく痛み、翳りない愛への恐れ。自身に注がれる冷徹なまなざし。クールさと瑞々しさをともに湛えた最新恋愛長篇。
著者等紹介
金原ひとみ[カネハラヒトミ]
1983年、東京生まれ。2003年『蛇にピアス』ですばる文学賞。翌04年、同作で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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亜希
42
再読。この頃の金原さんの作品がやっぱり大好き。高校生の頃からダイエットをしていると、食べ物の描写や摂食障害の登場人物が出てくる話を好んで手にとってしまうのですが、この小説の主人公はチューイング依存症で読んでいてワクワクする。ちなみに内容自体はいつも(初期?)の金原節全開。オシャレ人種がわちゃわちゃして、明確な答えのないままクールに幕が降りる。私は好きな作品ですが、少し病的なダイエット話に興味がないのであれば読まなくてもいいと思います。2016/09/03
らむり
35
精神的に病む?女性が複数の男性に振り回されるお話。共感できないけれど、なぜか引き込まれてしまう雰囲気の物語。2013/02/27
てんちゃん
32
金原さんは、心が病んじゃってるような、若い女性のヒリヒリするような心理情況をあぶり出すことにかけて卓越してます。自分も、訳もないのに心が瀬戸際のような危ういところにあった時期があったなぁと。年を重ねるうちに、心も丸くなり(悪く言うなら鈍くなったのかな)穏やかな日々を送れるようになりました。ヒリヒリした心が少しわかるから、金原さんの作品はけっこう好きです。2019/06/07
あつひめ
27
金原さん初読み。自分の心に足枷をしていないと生きているのが不安になってしまうのだろうか?自由になる事ほど怖いものはない。愛されている実感がなくてもそばに置いてもらえさえすれば自分でいられる・・・と自分に言い聞かせている。自虐的な生き方・・・それが何を生み出し何を失うのか・・・。たぶん、答えは早希自身は知っているであろうに・・・。読みながら、早希に手を差し伸べたくなるのは何故だろう・・・。他の金原作品も読んでみようと思います。2010/11/18
アコ
25
ひさしぶりに金原さん。読後に『文学』という言葉がよぎるのもひさしぶり。このところ起承転結がいかに巧みかということを中心にミステリ三昧だったことも大きく関係しているかと。心身ともに全力で破壊するかのように生きている主人公・早希の姿に親しみも共感もない。それなのに猛スピードで突撃してくるかのような、でもどこか繊細さもある筆致で読ませちゃうのってやはりすごい。山口さんとかあのあたりってなんだっけ?とかリツくんのことをもう少しなにか、とかあったりもするけども、それすらもういいやと。この短いページ数が絶妙。2016/10/15