内容説明
心から愛せる女性に初めて巡り合い、幸運にもその直後に妻が姿を消した。でも、どうして?「考えてみると昔から幼稚園の先生が大好きだった」ちょっと気弱な男が、それがためにじわじわと恐ろしい結末へ追いつめられていく「粘土の女」など10編。旧知のはずの友人が、恋人が、妻が、突然他人となる日、阿刀田ワールドの扉が開き、見えない罠があなたの足もとに口をあけます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
68
日常の黒さが謎として込められています。独特の雰囲気が秀逸なのは物語の中の罠に読者を引き込むからでしょう。日常が非日常になる怖さとも言えますね。友人や恋人、妻が突如他人になる恐怖。人には見えない裏の顔があるのかもしれませんね。2020/02/28
優希
56
短い話の中に人生がつまっているような印象を覚えます。急に友人や恋人や妻が他人となる恐怖はブラックユーモアそのものでした。日常が突如非日常となり、謎めいた雰囲気を醸し出す独特の距離感は秀逸です。毎回人が死ぬというバッドエンドでありながら、つい続きがあると想像してしまう空気が見えない罠のように口を開けて待っていました。面白かったです。2015/05/23
アメフトファン
34
阿刀田作品を読むのはかなり久しぶり。相変わらずちょっと不思議な時にはブラックユーモアを散りばめた短編集でした。表題作が一番良かったな。他人の為に祈る。なるほどなるほど。夫婦間の諍いについても多く描かれており、こんな事あるなと思いながら読みました。どこが?妻が怖くて言えません(笑)2014/09/03
MIKETOM
7
短編集の通しのテーマが分かりにくい。強いて言えばブラック系ということか。前半六編はまあまあ、後半四編はイマイチ。自分勝手な妻に振り回されるヘタレ夫ってパターンが三編。これは阿刀田の得意なテーマで、阿刀田はこのパターンが好きなんだろうね。表題作は、せっかくあそこまで寄せておきながらラストのオチがなぁ…。もったいない。「岬」振り向いた直後に何が起きるんだろう。女の手がすいと上がって…怖い。「手袋とスカーフ」ほんの些細な分岐点が二人の女のその後の人生を苦いものに変えてしまった。運命の無常を感じさせる一編。2019/07/21
takaC
4
1993年1月読了。1999/01/01