内容説明
革命の名の下に、血の犠牲を要求するため、官軍を率いて江戸に入った西郷隆盛。動揺する徳川慶喜と幕閣の向背に抗し和平の道を模索する勝海舟。両巨頭が対峙した歴史的二日間は、その後の日本を決定づける。幕末動乱の頂点で実現した史上最高の名場面の、千両役者どうしの息詰まるやりとりを巨匠が浮かび上がらせる。奇跡の江戸無血開城とその舞台裏を描く、傑作長編。
著者等紹介
海音寺潮五郎[カイオンジチョウゴロウ]
1901‐1977。鹿児島伊佐郡大口村(現・伊佐市)生れ。国学院大学卒。中学の国漢教師を勤めた後、創作に専念。1929(昭和4)年「うたかた草紙」が「サンデー毎日」大衆文芸賞に入選。’32年長編「風雲」も同賞を受賞。’36年『天正女合戦』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
60
井上雄彦さんのカバー絵バージョンで読みましたが、ないようなのでこちらで登録。江戸開城の経緯について当時の人々の書簡などから追う史伝。今まで読んだ歴史小説やドラマでは、西郷隆盛は官軍の先頭に立って徳川家を追及し戦を欲しているイメージでした。この作品では逆で、そもそもの始めから徳川家に同情を持っていたように描かれています。著者の西郷への敬愛が滲み出ていて、その堂々たる英雄ぶりに納得させられます。彰義隊の描き方も痛烈で私の中でイメージが変わりました。解説を含めてとても勉強になりました。2017/12/09
ともくん
49
世界でも類を見ない無血開城。 それを大都市、江戸を舞台に勝海舟と西郷吉之助の二人の千両役者がやってのけた。 この二人だからこそ出来た奇跡。 稀代の策士であり、千両役者、勝海舟。 己の信じた道を己を信じて成し遂げた西郷吉之助。 天晴れ。2018/07/31
レアル
47
今シリーズで読んでいる著者・早乙女氏の『会津士魂』の会津側から見た「江戸開城」。そして以前同著者で読んだ『西郷隆盛』やこの本も含め西側歴史から見た「江戸開城」。歴史を両側(幕府側&薩長側)から見る事によって本質が見えるのではないかと手に取った。江戸という時代は終わって良かった時代なのかどうか。。こちら江戸開城が行われる少し前から彰義隊の壊滅辺りまで描く物語。最近幕末モノを読む機会が多いが、海音寺氏の考察は時に突飛だが、しかしいつ読んでもしっくりと頷けてしまう。久しぶりに著者の本を読んだ。2018/03/29
優希
46
面白かったです。手紙や日記をベースに、江戸開城を描いた物語。息詰まるようなやりとりが江戸の無血開城。その裏側に引き込まれました。江戸時代最後の2日間によってその後の日本の道筋が決まったのですね。2023/08/02
キャプテン
40
★★★☆☆_「きゃぷ衛門とゆく時の旅フェア」【西暦1868年幕末─江戸城無血開城編】王政復古の大号令により、日本に〝政治を行う王〟が復活したでござる。つまりは、江戸時代の終わり。それは、武士の時代の終わり。西郷殿と、勝海舟殿がいかにして江戸城を無血開城に導いたか。両者の豪胆さ、狡猾さが面白く読めたならば、かなり大人にござろう。二百年以上も続いた江戸、その時代しか知らぬ人もたくさんいた。終わるとは夢にも思わない人もいたであろう。歴史に終点はない。今あなたがいるその時代が新時代である保証はないのでござる──。2018/03/20