内容説明
ついに大臣の座にまで上りつめた渋谷忠太郎。しかし妻の百合子は、金が人の心を動かすのだと信じてやまない夫に対し、どこかなじめないものを感じていた。彼女の心には、未だ捨てきれぬ辻への想いがあった。その辻と愛子の夫婦はそれぞれ弁護士と医師という職業に打ち込んで、満ち足りた生活を送っているように見えた。やがてそれぞれの夫婦に思いもよらぬ事件が起こって…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
70
渋谷は大臣にまで上り詰めますが、百合子は金に思いを馳せているようでした。政界の人物が実名で出ているので、昭和の政治的背景をまざまざと見せられます。時代の中で政治が動くことで、全てがうまくいくわけではないのですが、田中角栄が頭角を現してきたのもまた事実。創作と事実が混在していると言われても違和感なく読めました。2018/07/28
彩
7
読みかけの本が二冊ほど他にある状態で読み始めたのに、これだけぐんぐん上下巻とも読んでしまった。二人の女性、二人の男性の出会いからの40年を描いた作品。上下巻という短さに対して少し詰め込み過ぎの感は否めないものの、それでも納得の読後感。さほど強くはないけれど、遠藤周作らしいキリスト教的な雰囲気もちらほら。こういう類の作品も書くのか〜と思いつつ、やっぱり遠藤周作は面白かったです。2018/11/27
Taito Alkara
7
昭和の終わりを感じさせる良作でした。2017/05/07
りゅっく
4
なるほど、そういう意味のタイトルだったのだな、と。たぶんこの人がモデルと思いながらの政界のどろどろもまた面白い。遠藤節光るエンターテイメント作品1992/05/01
彗
4
下巻に入るほど物語が面白くなった。政治や医師、弁護士、主婦、いっけん何のつながりもないような人々の世界がとてもうまく一つの小説に出来上がっているところなどはすばらしいと思う。最後の方は泣きそうになった。人間は金と権力だけじゃないのかも、と大切なところに忠太郎がきづくところなんかぐっとくる。何のための人生だったのかと死を間際に感じるのはつらい。いろんな人生があるけれど間違った選択をしない様に生きたいものです。2011/01/01