内容説明
キリスト教作家の勝呂は自作の授賞式で、招待客の後ろに醜く卑しい顔をした、自分に酷似した男が立っているのに気が付いた。同じ頃、勝呂が歌舞伎町の覗き部屋や六本木のSMクラブに出入りしている、という醜聞が流れる。この醜聞を執拗に追うルポ・ライターに悩まされながら、もう一人の〈自分〉を探す勝呂が見たのは…。仮面を外したキリスト教作家の心奥を鋭く抉った衝撃の長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
106
清く生きているはずのキリスト教作家の奥に潜む肉欲・醜さのようなものを歌舞伎町の覗き部屋やSMクラブを登場させながら、刺激的に描く。誰もが心のうちに持つ醜いものと仮面のような振る舞いの矛盾をうまく書き込んでいる。
ω
42
主人公の勝呂はクリスチャンの作家で、これまで綺麗なことばっか書いてきた。そこへ、勝呂そっくりだけど厭らしい笑みを浮かべる男が出現し…… 私は遠藤周作らしい、救いのある話が大好物なので今回のミステリーチックなのは意外だったけど興味深く読んだ…!!2023/09/10
団塊シニア
39
仮面を外したキリスト教作家の心の奥底を描いたミステリー小説的な物語、筋書が読みやすいだけに途中退屈する内容だけに今いちの作品。2014/06/10
背番号10@せばてん。
30
1990年2月12日読了。おじさんだって、たまにはこういう本を。(2021年1月24日入力)1990/02/12
GaGa
30
入口はミステリーのような感覚。しかし、最後まで読んでみると残るものはさして存在しない。著者としては作家生活で言えば晩年の作品。正直、入口は良かったのだが、出口までは考えず、活力の衰えた筆をふるった作品としか思えなかった。残念。現在は絶版なのか、それも頷けるのがなお残念。2011/11/21