内容説明
敗戦直後に出会ったモーリヤックの『テレーズ・デスケルー』は、作家として進むべき方向を、著者に教えてくれた作品だった『沈黙』を書く時も『侍』の時も、この小説を読み直してから執筆を始めた、という…。40年以上にわたり、読むたびにいつも新しい顔を見せる『テレーズ』を回想し、文学と宗教について語った長編エッセイ。巻末に遠藤周作訳『テレーズ・デスケルー』を収録した。
目次
なぜ彼女は夫に毒を飲ませたのか
彼は肉慾に苦しんだが
秋よ、落日の時よ、
マイナスはプラスになる
俗なるものと聖なるもの
心にひそむ元型
物語が人々に語りつがれるには
乾いた土地、水のある場所
ひとつの小説のできるまで
テレーズと菜穂子と
「コーランを読む」を読みながら
すべての道はXに向う。だが…
悪、死の本能
テレーズ・デスケルー(モーリヤック著 遠藤周作訳)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫森
4
「西洋的というのは西洋人にとって理性で把握できるもの、つまる明晰で秩序があり合理的なものが善であり、混沌として掴みがたいものは不気味で病的だという考え方が長い間根底にあったからだ。だから無意識ーつまり理性や智慧の働く意識下の混沌とした領域に本能的な恐れや不安を抱くのである。」P.292021/06/11
シャーリー
2
前半の遠藤周作による解説がなければ、テレースデスケルーに対する印象は、少し違ってきたかも知れません。逆にいえば、遠藤視点で読みすすめたので、別の解釈はできなかったということになると思います。でも、テレーズの感じる息苦しさは日本人にも共感可能な感情だと思います。人によって強弱はありますが、生活とは息苦しさとは切り離せないものですから・・・2010/01/15
もみじ
2
(A)フランソワ・モーリャックの「テレーズ・デスケルー」をテキストにしながら、人間の無意識や物語の元型についてまとめる。遠藤周作が翻訳した「テレーズ・デスケルー」本文も掲載しているので一石二鳥。「テレーズ・デスケルー」の物語は、男女の意識の違いも示しているように思います。2009/08/21
tess
1
前半の解説部分はわかりやすく面白い。「テレーズ・デスケルー」に入ってからは読むのにとても時間がかかってしまった。初読時テレーズに感じた嫌悪感は無意識下の共感からだったのだろうか。2021/06/15