新潮文庫<br> 昭和の文人

新潮文庫
昭和の文人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 339p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101108049
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0195

内容説明

実は「昭和の文人」という言葉自体が、限りなく苦いアイロニーなのだ。文をもって立とうとする者から風雅の安閑を奪い去った時代、それが昭和だったのだから…。平野謙の韜晦、中野重治の転向、堀辰雄の変身。昭和の容赦ない苛烈を、彼らは如何に生きて何に慟哭したか?どんな毒を含みながら何を書こうとしたのか?平成の時空間をも冒し続ける昭和の病理をえぐる、警世の文学論。

目次

一身にして二生を経るが如く一人にして両身あるが如し
そういう父の一人
“辛よ、金よ、李よ、…”
“村の家”への裏切り
天皇と“五勺の酒”
『甲乙丙丁』の時空間
時空間の変容と崩壊
『幼年時代』の虚実
無花果の木のある庭
麹町平河町と本所小梅町〔ほか〕

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

フリウリ

6
中野重治論では、前半は「転向」、後半は戦後の「言語空間」という視点から、主に論じられています。ただ、江藤氏が発明した「言語空間」という概念だけでは、(すぐれた)作家の内面に踏み込むことは難しく、また「転向」に関して江藤氏は、中野が戦後「天皇を同胞と認め親しんでいた」と確信するものの、その論拠は小説の主人公の言葉に過ぎません。江藤氏は疑いなく、中野重治に好意を寄せています。しかし、その愛を示す方法が自己中心的で、ひねくれてみえます。そこに江藤氏独特のものがあると、いえるとは思いました。72023/06/17

うえ

5
奥付けを見ると平成十二年発行とあるから先生が自殺して少したってから購入したものだろう。「この連載を開始した昭和六十年一月には、勿論昭和はまだ続いていた。そして、この連載が、完結した本年五月には、昭和は既に完結していた(平成元年)」デビュー作が出版される事情から平野謙に序文を貰いにいく所から話は始まる。「東京ライフ社は…小出版社で…編集一人に営業一人、…「無名の人の本を出そうっていうんですからね。偉い先生の序文でもついていなけりゃ、第一取次が取ってくれませんや」…Nさんの担当は営業で、肩書は社長であった」2017/10/16

euthanasia

0
「閉された言語空間」などの検閲論に最も顕著なように、江藤の評論は「テクストの改変」に対してほとんど偏執的にまで執着するのが特徴であり、本書に於てもその特徴が至る所に見られる。テクスト間の僅かな文章の異動や削除から作者が抑圧したものを引き出そうとする作業はほとんど精神分析家のそれに近く、テクストの根源的本質である「書き換えられる可能性」におそらく最初に着目した批評家であるという点で江藤淳の評論は今なおアクチュアリティを湛えているように思われる。2013/01/07

かばこ

0
よくわかんないなぁ…というところがあっても我慢して読み進めていくうちに、じわじわと面白くなっていきます。堀辰雄作品に感じた違和感はこれだったのかと、膝を打ちました。2009/12/10

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