内容説明
小学生同士で“結婚”したハルとカン子。大きくなってから再会するも、それぞれ究極の悪の道をめざしていた―。詐欺教育塾のガーピー先生、暴力団のスットン親分、資産家のプクプク爺さん、女実業家にして大金持ちのチン夫人…。ひと癖もふた癖もある面々を巻き込んで繰り広げられる“三億円争奪戦”!食うか食われるかの騙し合い、惚れた腫れたの逃亡劇。さまざまな思惑をはらんで、舞台は海をも越える。果たして、生来のアウトサイダー、ハルの行き着く先は?そして大金のゆくえは?阿佐田文学ファン必携の長編ユーモア・ピカレスクロマン。
著者等紹介
阿佐田哲也[アサダテツヤ]
1929年東京生まれ。雑誌記者などを経て作家活動へ。阿佐田哲也の筆名で麻雀を題材にしたギャンブル小説を多数発表する一方、本名の色川武大名義で主に純文学、井上志摩夫名義で時代小説などを執筆。89年心筋梗塞で倒れ死去。享年六十歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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taka
2
宝くじで高額当選すると、案外幸福ばかりとは言えないというのは、単に外れた人の嫉妬だと思っていたが、そうでもないのかも。そんなことを考えさせてくれた一冊〔本書に宝くじは関係ない〕持ち馴れない大金が自由を拘束するってこともあるのだね。2014/12/20
ゆーいちろー
1
ずいぶん昔に観た「俺たちに明日はない」を思い起こさせる物語。実際のボニーとクライドは、かなり極悪だが、本書のハルとカン子は悪党でありながら、どこか憎めない。この物語をピカレスクロマンと呼んでも全く差し支えはないのだが、どうもアウトローによる青春小説といった感じがしてならない。それはやはり主人公の二人が若いからだろうか?人間の無軌道さ、我欲、無知そういった諸々の悪徳を相対化してしまうのは若さだけとも思える。老獪なガーピーやその他大勢の大人たちの思惑を、一瞬にして破壊してしまう結末の愛の言葉…若いっていいな。2013/03/05