内容説明
前作「笹色の紅」が評論家に絶賛された新鋭が、鉄火肌の浮世絵師国芳と、脳天気な弟子たちの浮世模様を娘の女絵師登鯉の目から描いた、ほのぼのおかしくて、ちょっとせつない書き下ろしシリーズ第一作。国芳の娘登鯉は、刺青が大好きで博奕場にも平気で出入りするような“侠風”な美少女。一方で、天保の改革を鋭く諷刺した国芳は、とうとう北町奉行所に召喚されてしまう。
著者等紹介
河治和香[カワジワカ]
1961年、東京都葛飾区柴又生まれ。日本大学芸術学部卒業。日本映画監督協会に勤めるかたわら、江戸風俗画家の三谷一馬氏に師事して、江戸の風俗を学ぶ。『秋の金魚』で、第2回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
105
歌川国芳とその娘が巻き起こす話で、当時の江戸の話としてはかなり破天荒だと感じました。娘の方はあまりに現代的な感じで好きになれるかなあと思われます。遠山金四郎や鳥居耀蔵が出てきて話が発展しそうです。とりあえず全巻を読みとおそうかなあという気がしました。2017/07/15
Willie the Wildcat
84
生業とする”浮世”に流されるも、天性と磨いた技で「心」を描く。個性豊かな面々に囲まれる国芳・登鯉親子を通した江戸の生活、そして時勢を描く本著。印象的なのが、白州で暴れた後に、国芳が新品の赤い鼻緒の下駄をぶっきら棒に登鯉に渡す件。愛情に溢れてるなぁ。背守りなど、”彫り”に関わる多彩な視点も興味深い。思わず苦笑いしたのが、国芳の鼻歌。鯛、鰹、鯨、鰯、赤貝、そして金魚。挙句、鰹節に河豚?!『ニッポンチ』を先に読んで正解という気がした。因みに、次女・お芳が本著に出てこないのは何故だろう。2021/04/26
はつばあば
64
浮世絵と春画が同列だと知ったのは去年の春画展。本当に恥ずかしい程の物知らず。箱入りと無知は同列じゃないかと思ってしまう。奔放な国芳とおきゃんな登鯉親子に江戸の豪快なきらびやかさにメを見張る。時代の移り変わりはどの時代も同じ。治政者によって良くも悪くもなる。岡田屋鉄蔵を教えてもらったお陰でこの国芳と登鯉の物語も味わえた。「春画見たからって世の中が悪くなるものか。まぐあいの面白さも知らないで気の毒なものさ」と。「ひらひら」「大江戸国芳」読まれるなら是非こちらも。2017/07/05
こばまり
52
第一作で止まっていたので、この際シリーズをイッキ読みしようと再読。「重箱の強飯をあけたように口々にわぁわぁわめきながら喜んでいる」。こんな描写に出会うとうれしくなって、通勤電車の中でにやにやしてしまう。2022/02/17
こばまり
43
イイネェ、こうでなくちゃと思わせる躍動感と滑稽味。江戸の暮らしがいきいきと。わたしゃこのお話の中に住んでみたい。歌川国芳いいおとこ。2018/09/14