出版社内容情報
直木賞作家が綴る選りすぐりの短編集
直木賞作家・井上荒野氏の短編小説集。アラフォー世代を迎えた、大学時代の同級生である4人の女性たちの微妙な人間関係を描く書き下ろし短編「ハニーズ」をはじめ、思いを寄せる同僚の既婚男性が住んでいる島を訪ねていく、惣菜工場で働く女性の淡い恋心と、やはり同僚のブラジル人との友情を描いた「他人の島」、ゲイカップルの別れを描く「きっとね。」、幼稚園時代の父への回想を描き、著者の父・井上光晴氏との思い出が重なる私小説的短編「泣かなくなった物語」など著者がこれまでに発表した作品のなかから選りすぐった全9篇。
内容説明
十九歳、夏、陽光の中を笑い転げながら歩いている私たち。ハニーズ。はちみつたち。とくべつな四人。四十歳に近づいた今でも、私は「ハニーズ」と私の恋とを注意深く分けている。ふたつが混じりあわないように。結婚、離婚、家族、恋愛―9篇の傑作を収録した魅惑の恋愛小説集。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年東京生まれ。1989年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を、2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞を、2008年『切羽へ』で第139回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミーコ
42
『切羽へ』が合わなかったので 遠ざかってた井上さんですが、何回か手に取ってた作品なので読んでみました。今までに詠んだ中で1番、良かったかも・・・ 『虫歯の薬みたいなもの』と『犬と椎茸』『ダッチオーブン』が好みでした。帯の通り【甘くて苦い】ストーリーズでした。2015/09/12
美登利
42
短編集にしては、一つが短いな、と思ったら色々なアンソロジーとして出された本に載せられていたのを纏めた作品のようです。通りで読んだことあるものも有ったのですね。「井上さんは不倫の話ばかり書く人だ!とよく言われる」と仰ってましたが、これを読むと確かに本当だなと認識しますね。それを善悪で片付けてないのが、井上さんの持ち味なんでしょう。「皆さん不機嫌になるんですよ。でもあなたの旦那様のことを書いてる訳ではないですからね」はい、その通りです。もっと知るためには「切羽へ」を読まなくては。2014/01/30
ひめありす@灯れ松明の火
35
井上荒野のナインストーリーズ。全部で八つの秘め事は、隠していたり、耐えていたりするけれど、決してそれを表へは出さない。姿が見えていたとしても、それは誰にも触れさせはしない。蜂蜜で作った美しい黄金色のゼリーの中にそっと沈めて、外から見つめているだけでいいの。もし、うかつに触れようとしてくるのなら、どろりとしたはちみつに指を取られて動けなくなってしまうわ。それでもあえて触れてこようとするのなら、たとえ好きな人でも何年付き添った旦那でも、刺しちゃうんだから?2011/12/18
Kumiko
30
別に無理に蓋をしなくてもいい感情に蓋をしたら、それはもう「秘めごと」になる。元彼に対して、昔婚約者を奪われた女に対して、浮気を隠しきれていると思っている夫に対して…。不穏だな〜。皆一様に「秘めごと」を口にしないから、より不穏さが顕著になる。明らかにならない事の方が…見え隠れするだけで全貌は杳として知れない方が、こんなにも仄暗いのか。ポップな装丁とはそぐわない粘度のある短編集。2022/03/15
万葉語り
29
犬と椎茸がよかった。最後に全部つながると思ったらそうでもなかった。一人の人をずっと思い続けるのは難しいことだなあと思った。でも、こんなふうに浮気男ばかりじゃ世の中大変だろうなあとも思った。2014/08/24