出版社内容情報
誰かの“特別”でありたいすべての人へ
画家である父のモデルをしている、小学5年生の亜耶は、常に自らの美意識と神秘性に特別なものを感じていた。そんな彼女は相棒の彩といつも行動を共にしていた。歳を重ねるにつれ、次第に自分に宿る神秘性が損なわれていっていると焦りを感じるようになる亜耶。11歳の誕生日を迎えた当日、その感覚はより一層強くなっていく。学校に大勢いるただの凡人になり下がりたくないと、彩と共に「特別な」何かをしようと決意。いつもと少し違う日常を模索する。亜耶たちの前に、「学校にナイフを持ってきた」と騒ぐ男子が。そこに着想を得た相棒の彩が、「ナイフがほしい」と言い始め……。
渡辺優だからこそ描ける少女の心の深い闇。大人と子供の狭間で複雑に揺れる十代のリアルを鋭く紡ぎ出す!
【編集担当からのおすすめ情報】
自分に自信がない、でも、誰か一人でもいいから自分を特別だと思ってほしい……。大人でも折り合いをつけるのが難しいこの気持ちを、小学生で抱えてしまった女の子が主人公です。彼女の切実さ、そしてその先の結末をぜひ見届けてください。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よつば🍀
79
「神秘的な子供」「特別な少女」「無垢な女の子」「ただのわたし」4話収録の連作短編集。小学5年生の亜耶は画家の父、パート勤めの母、6歳の弟と家族四人で平穏に暮らしている。亜耶が常に話し掛ける実態を伴わない彩。少女期特有の妄想?それともホラー?イマジナリーフレンド?先行きが全く読めないまま、不穏なアイテム、ナイフの登場にビクつき、校舎の二階から飛び降りる亜耶に危うさを感じる。自分を、神秘的で特別な存在だと信じこむ亜耶。それこそが、幼さの象徴であると思うも、特別と凡人、大人と子供の狭間で揺れ動く心情がリアルだ。2021/08/10
シャコタンブルー
54
「今日で天才は終わり」「??」「明日誕生日だから10歳(テン歳)は最後の日」(笑)。 小学生時代の友達のあの時の言葉は今でも思い出す。だから10歳から11歳になる時の感覚は何となく覚えている。自分が特別な存在ではなくなる日。勉強も運動も容姿も特段優れた所もなく、普通だと自覚した頃だったかも知れない。自由奔放で本音で語る彩と自分は特別な存在と着飾る亜耶の言葉の対比がユニークだった。何が特別で何が普通なのだろう。誰しもその両面を持っている。無視されていた少女にかけた言葉は普通であっても特別な思いを残した。2021/08/27
のり
27
ジャケットから想像してたほどドロドロした話ではなかった。父を画家に持つ少女が、自分のことを特別な存在だと意識して背伸びしてる感じが、少し痛々しいけど、わかる気もする。イマジナリーフレンドまで作り出して、特別な子でいようとするが、成長とともに自分が普通の女の子でしかないことに気付き、傷つき、乗り越えるまでのお話。2021/09/17
うまる
19
神秘的である事を存在理由のように感じている11歳の葛藤が痛ましいです。特別な人と思われたいという願望と、分際を心得る事による妥協との兼ね合いは大人でも難しいもの。この歳でこういう挫折感を味わうのは苦しいけど、良い成長になったのだと思います。こういう事を経ないと、一般人とは違う自分を演出するイタい大人とか、厨二をずっと拗らせてる人になっちゃう可能性がありますしね。ファンタジーにありがちな結末のディスりが、凄く納得で印象深かったです。それにしても絵画要素がある話を踏まえた表紙が素晴らしい。2021/10/21
PAO
11
「六歳のころには、自分の神秘性を理解していた」… (2頁)2021/08/28