出版社内容情報
ちょっとだけ背中をおしてくれる物語
学校で友だちとケンカしたのをきっかけに登校できなくなった美桜里。
祖母に連れられていった町内会の「手作り市」でカレーのキッチンカーを出していたおじさんと少年に出会う。ユニークな二人と、すっかり意気投合してカレー作りを手伝うことに。この二人も訳ありのようだ。
対人関係では、人との距離感がとても重要だが、いつでも“イーブン”でありたい、そのためにはどうしたらよいのかを問う、少女たちの成長物語。
【編集担当からのおすすめ情報】
子どもたちの抱える問題にストレートに切り込んだ問題作を次々と発表している村上しいこさんの最新作です。
女性の性について考えるきっかけになる一冊です。思春期の少女たちにぜひ読んでほしいです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美紀ちゃん
92
日本女性の人権は世界ランキング下位。パパのママに対する暴力の描写は本当に怖い。余裕が無い人の行動。パパは子供の頃に親からの虐待を受けトラウマを抱えている。自分の気持ちを言葉で表現することがとても苦手で、いつも言い返す言葉が見つからずストレスを溜め込みそれが暴言や暴力に。怒りは困り。今、自分は何で困っているのだろう?と考えると不思議と気持ちが落ち着く。誰かが怒っている時も迷惑なヤツだと思うのではなくてなに困ってるんだろ?手伝えることはないかな?と考えられるように変わったパパ。たくさん考えさせられる本。2021/04/26
chimako
89
前半こちらも傷つけられるような母親の言葉はまるでナイフ。美桜里の母は父のDVで離婚し二人暮らし。自分は不登校。母は何故自分の口から出る言葉が事を荒立て相手の気持ちを逆撫でるだけだと気づかないのか。カウンセラーなのに。一番近くにいる家族に優しい眼差しを向けられない。人は何故人を傷つけるのか。親でも子でも他人でも。人を傷つけるなんて簡単なこと。余計な一言を付け加えればいい。気付きが大切だが、気づけないのもまた人。物語の〆は明るくてホッとする。虐待もDVも連鎖すると言われる。それを断ち切る強さを養う場所が必要。2021/05/17
ネギっ子gen
73
【明日へ命を滑り込ませるって、大変なことなんだね】 裏表紙の絵がナイス。お互いにそっぽを向いている、パパとママ。離婚した不器用な二人。それを気遣うように見ている、主人公・中学生の美桜里。本書の核心を見事に活写してますね。美桜里は、学校で友だちとの喧嘩がきっかけで不登校に。祖母に連れられて行った「手作り市」で貴夫おじさんと少年に出会う。ユニークな二人と意気投合してカレー作りの手伝い。登場人物各々が自己中な言動をする中、対人関係では、いつでも“イーブン”でありたい、そのためにはどうしたらよいかを問う感動作。⇒2021/11/18
モモ
62
友だちと喧嘩したことがきっかけで学校へ行かなくなった美桜里。スクールカウンセラーの母とTV局勤めの父は、父のDVで離婚。祖母の知人のお店を手伝うトムと出会う。イーブン(even)な関係を求めていくが…。人と人が対等な立場で向き合うことが大事なのは伝わるが、読んでいて何だかしんどい。お互いに思いやって行動すれば、対等を意識しなくても何とかなる気もする。まだ解決していない苦しみを、ムリヤリ解決させたような息苦しさが、最後まで消えなかった。2020/08/30
みつばちい
43
本当にたまたまなのだけど、ここ最近立て続けにDVやフェミニズムがキーとなる本を読み、内容の共通点や違いなど感じながら読んだ。お父さんが怒りのコントロールができず手を出してしまい離婚した主人公の両親。スクールカウンセラーのお母さんはフェミニズムの活動をライフワークとしていて、夫にはかなり攻撃的な物言い。主人公はそれもよくないのに、と思っている。そんな中、トラブルから不登校になった主人公はキッチンカーのカレー店の男の子に惹かれていく。彼がよく言う「イーブンな関係」とは?少しずつ成長していく主人公。中学生向き。2021/08/30