出版社内容情報
天才少女画家、時任純子が自殺してから20年。作家となった「私」が純子の死の真相を探るべく、彼女と関係のあった男たちに会うが…。私小説的な色彩の濃い初期渡辺文学の傑作。解説は小池真理子。
内容説明
純子が本当に愛したのは誰だったのか?天才少女画家と呼ばれた純子が阿寒に消えてから20年。作家となった「私」は、彼女をめぐる4人の男たちに会い、その死の真相を探ろうとする。清冽な北国の空気が胸に痛い瑞々しい作品。北のロマン・北海道編。
著者等紹介
渡辺淳一[ワタナベジュンイチ]
1933年10月~2014年4月。北海道生まれ。道立札幌医科大学卒業。医学博士。大学卒業後、母校の整形外科学教室講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で第63回直木賞を受賞。1980年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で第14回吉川英治文学賞を受賞。2003年紫綬褒章受章、第51回菊池寛賞受賞。医学に題材をとったもの、評伝もの、男女の愛の葛藤を描いたものなど多彩なテーマにわたる著作多数。札幌に渡辺淳一文学館がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KJ
1
渡辺淳一初期の作品。主人公の純子の自殺から彼女にま交わる男から多面的に彼女の像が浮かび上がる。ほとんど実話に近い話。このシリーズ、最後の解説、著者のコメントが、本に深みを与えてる。2016/08/08
咲
0
「死に顔の最も美しい死に方はなんであろうか」「生きていた時より美しく、華麗に死ぬ方法はただ一つ、あの死に方しかない。あの澄んで冷え冷えとした死」白一色の静寂の峠に赤色を塗りつけた、時任純子の驕慢で僭越な死。彼女は神話を演出した。まわりの男たちもまたその神話に酔い、楽しんだのだった。鎮静睡眠剤アドルム。基剤はエチルヘキサビタール・カルシウム。白い錠剤に爪で溝をつけたようなそれに魅せられてしまう感受性を、芸術と呼ぶのだろうか。北西に白く雌阿寒岳が見えるこの町で、この冬に、時任純子を読めて嬉しい。2022/01/29