出版社内容情報
身の回りの空間の気候、すなわち〈微気候〉の研究者である八雲助壱。元教え子と共に「雲の倶楽部」なる会員制のバーを訪れた彼は、不思議な小瓶を預かることに──。戦時にも遡る、空の一族の壮大な物語。
内容説明
空の一族―気象を予知する能力を受け継ぐ者たち。この集落に身を寄せた子どもたちの出身はたしかに様々で、九州だけではなく、四国や本州の西側各地に散らばっていた。彼らはもともとは同じ一族の出で、気象を予測する力を持ち、古くから重用されてきた者の末裔だという…。微気候の研究者、雲の芸術家…彼らは何処から来たのか。軽やかでせつない、知的エンタテインメント。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yunemo
39
時代が変わり、天気も変わる。わたしたちは新しい世界を生きているのかしら… 文中の表現ですが、まさに今、現実的に気象の変化、災害をもたらす雨と風、間違いなく負への変化の兆し、そのもの。これを読み解く一族の存在。なんだか軽やかなのに、妙に切なさを自身に植え付けます。幻想的な世界、空の一族、別な表現だと、ミュータントの世界と言い換えても。何代にもわたり、また子供の時代からさたんの類と呼ばれ、自身の持つ力を封印せざるを得なかった葛藤の歴史、やりきれない想い。天空を見ることができる一族の歴史、やっぱり切な過ぎます。2015/10/04
RIN
33
『雲の王』の関連本?続編やスピンオフではなく、天変地異を読める異能集団・空の一族の昔の話、今の話etc.で短編連作集。気象をコントロールできれば世界を制す、と言われているだけに、気象を読める一族の能力は軍事利用されたであろうことは想像に難くない。川端さんの描く異能は科学的に分析解説されていて、これなら天賦の才能の一種だ、と排斥されることもなかろうに・・・。こういう形であっちちょこちょここっちちょこちょことエピソードを重ねて最終的に集大成の長編が読みたい。2017/03/23
万葉語り
31
メガディザスターが日常的な現代において精密な気象観測は絶対必要事項。コンピューターによる過去のデータを元にしての計算が感覚的にできる子供たちが戦時中に存在した。兵器として徴用される前の子どもたちを守った先生の記憶を能力を受け継いだ雲の一族が過去にあった事実を明らかにしていく話。頑張って読みました。2015/10/10
きらら@SR道東民
28
気象を予知する能力を受け継ぐ一族、戦争に利用されたり、異能という事だけで迫害を受けたりと暗い過去もある。切ないが、空を読み、雲や風と語る不思議な力という発想が素晴らしい。2015/10/27
えも
25
天気を予知できる異能者たちが主人公の連作短編。読友レビューにあるように恩田作品っぽく、最初は謎ばかりだけど読み続けるうちに謎が解けていき、最後は納得。分校の教師がいいね。それと八雲先生の「人見知りされない」属性って、何だか自分を見ているようで親近感がわきました。2015/11/18