出版社内容情報
上野戦争で散ったはずの男
元新選組十番組組長
原田左之助は生きていた。
「今の俺たちに誠はあるのか」
明治の世にひそむ新撰組の残党を描いた、渾身の時代小説!
明治十一年。東京の片隅にある古物屋、“詮偽堂"の主人・松山勝。彼の正体は、幕末、彰義隊とともに上野で戦死したはずの元新撰組十番組組長・原田左之助だった。松山のもとに集まるのは、幕末の動乱をともに潜りぬけた猛者たち。新聞錦絵の記者で高波梓と名乗る男は、諸士調役兼監察を務めた山崎烝。そして過去に三番組の組長でありながら、いまでは新政府の犬と揶揄される警官・藤田五郎。またの名を斎藤一。
斎藤からの情報で、原田と山崎は人買いを生業にしている元長州藩の士族や、窃盗団と対峙する。三人はやがて、新政府を操る、ある人物に行きつく。
【著者略歴】
矢野隆(やの・たかし)
1976年福岡県久留米市生まれ。2008年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。著書に『斗棋』『慶長風雲録』『乱』『我が名は秀秋』『凜と咲きて』『鬼神』『山よ奔れ』『朝嵐』など。
内容説明
明治の世にひそむ新撰組の生き残り。原田左之助、斎藤一、山崎烝…政府の犬に成り下がるか、誠の志を貫くか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あも
90
至誠の残滓というタイトルが本書の内容を余すところなく表しきっている。新撰組の掲げた誠の旗。刀折れ矢尽き果て、バラバラになり近藤も土方も死した明治の世。史実でも生存していた斉藤一は東京の外れの古道具屋を訪ねる。そこにいたのは死んだはずの元十番隊組長・原田左之助と監察方・山崎蒸。磊落な原田、ニヒルな斉藤、くせ者な山崎と、イメージを損なわない人物描写に安心して読める。時代からこぼれ落ちた残滓。絞りかすの意地。折れた槍を、朽ちた刀を、振るう彼らの手と魂にぶれはない。誠を踏みにじる者どもに牙を剥け、吠えろ、新撰組。2019/12/01
さつき
76
原田左之助、山崎烝が明治の世に生き残り、斎藤一と共に暗躍する、というまさか!の物語。三人の新しい世での立ち位置はそれぞれでも心の支えは新撰組での日々であったことは変わらず。左之助の真っ直ぐな気性。烝の優しさ。一の見えにくい心など、三人の性格の違いにより巻き起こる騒動は良く考えられているなぁと思います。もしもの世界を楽しみました。2020/06/14
Die-Go
60
図書館本。死んだはずの新選組十番組組長原田左之助と緒士調役監察山崎烝が実は明治以降も生き残っていて、三番組斎藤一と共に、降りかかってくる様々な問題に立ち向かっていくお話。正直、あまり合わなかった。死んだはずの二人が生き残った経緯がイマイチすっきりしなかったのと、斎藤のイメージが『流浪人剣心』のまんまでひねりがなかったこと。物語自体はテンポ良く、一気に読める。★★★☆☆2019/10/06
ポチ
59
生きていた山崎烝、原田左之助、そして斎藤一が、最後は己の誠を貫く姿に、「斎藤!山崎!やったれ!!」「左之助、負けんなよ!!」心で叫んでいました。2019/09/10
ブルちゃん
44
新選組の生き残り3人が、心に誠の文字を刻んだまま、死んでいった仲間たちを胸に、明治の世を生きて行く。 明治時代の政治的な流れが無知なので、難しい所もあったが、なんと言っても原田左之助の真っ直ぐな性格に救われた。 新選組で殿を任されていたのは、この勝ち気で熱い性格からだろう! ニヒルな斎藤さんもカッコイイが原田左之助の侠気が目立つ作品😆✨ 2020/05/13