内容説明
画家志望の少年が自宅で殺された。少年の父は余命わずかで、事件の裏にはニュータウン計画の土地買収によってころがりこむ莫大な遺産の相続問題が絡んでいた。捜査本部の桜林警部と田所刑事部長は容疑者を叔父に当る岡京二郎に絞った。ところがなぜか京二郎は、無意味なアリバイ工作をほどこし、二転三転証言を覆す。果してその意図は?そして真犯人は?巧妙なトリックを駆使した本格推理。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はんげつ
3
「殺人の容疑がかかった男は、用意したアリバイが崩れるたびに新たなアリバイを主張してくる、その意図は?」という魅力的な問いへの解答は想定を超えてくるものではないにしろ、非常に実利に適った策略だったのだと唸らされます(こんなうまいこと何重にもアリバイ作れるわけないやろと思わないでもないですが……)。それに、実益だけではない容疑者の多重アリバイトリックへの妄執のようなものが深い印象を与えてくれるので、一冊としてのまとまりが良いです。おもしろかった。2019/07/05
kanamori
0
☆☆☆2011/10/14
てまり
0
入れ子方式になっているアリバイを崩していく話。たんなる知的ゲームとしてでなく、一つ一つのアリバイに犯人の執念が結実していると判明する部分は圧巻。人間が社会的動物だからこその劣等感が犯行のベースになっていて、そこを犯行自体を通じて表す手法は素晴らしい。本格にこだわりすぎる現代ミステリとはまた違った昭和の傑作。2011/08/28
青
0
普通なら妻が犯人っぽいのだけど・・・。がんに冒されていた夫が死んだときの、真実の思いは誰にもわかってもらえない、という感想がどこかで生きてくるのかと思ったのに、まったく語られてなかったのでちょっと消化不良。2010/07/31