内容説明
女ならば、だれの心にも必ず灯り、燃えあがるはずの愛情の火―。酒を飲む、女と遊ぶ、競馬・競輪へ通う放蕩児だが、将来を嘱望された原子物理学への情熱を失わない香取耕二に魅かれる独身女流作家宇女子と病院のひとり娘千晶。さまざまな愛のかたちを通して、女性の深層心理を見事に抉る傑作大長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
amanon
3
かなり頁数であるのにも拘わらず、殆ど退屈することなく読むことができた。しかも、当初新聞連載という形で発表されたというのだから、ちょっと驚き。著者は予めかなり綿密に作品の構想を練っていたのではないか?それはともかくとして、一見ニヒリストという仮面を被っていながら、どこか憎め無さを感じさせる香取の人物描写が秀逸。特に「決して愛していなかった」と言い張っていたみさ子の死に慟哭したという記述にその隠された人間性が垣間見られる。また、解説にもあるように脇を固める人達も多用な魅力に富んでいるのも特筆に値する。2013/04/06
ヒラマサ
1
1か月近くかけてゆっくり読了。恋愛小説なので核融合研究者は必読とまでは言いませんが、楽しめる作品だと思います。僕は恋愛観小説だとも思いました。時代が違うので俯瞰してしまいますが、当時の常識や流れの中で燃える炎に翻弄される精神がストレートに心を揺さぶりました。憧れの物理学者像みたいなのもここにあります。2021/05/05