内容説明
蘇我氏の根拠地・飛鳥を離れ、都を新天地・小懇田へ遷した聖徳太子は、いよいよ政治改革に着手した。天皇を中心とした強力な律令・文化国家の建設を―。その太子の夢は、冠位十二階と憲法十七条の制定となって実を結ぶ。太子の理想国家像の結晶とも言うべき憲法十七条を、「五重塔的構造」で解釈するなど、暫新な視点からその思想の真髄に迫る。
目次
第2部 憲法十七条(江戸時代の太子批判;崇峻帝の暗殺と女帝の誕生;国際政治家への第1歩;三国同盟と日本の立場;小墾田遷都と政治の革新;十七条憲法の思想)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キック
60
再読。第二巻は崇峻帝暗殺から小墾田遷都、そして冠位十二階、十七条憲法まで。中でも十七条憲法の分析には第六章と第七章の二章分・200頁と、それだけで文庫一冊分のボリュームで圧倒。その五重塔的構造と円環的構造を明らかにしています。まあ聖徳太子が、そんな構造を意識していたか否かは別の話ですが・・・。また第五章の「小墾田=大福説」は完全に眉唾。当人は自信満々ですが30年経過しても箸にも棒にもかからない珍説ですので、話半分で読んだ方が良いでしょう。特に難解というわけではありませんが、読破するには忍耐力が必要です。2022/09/18
井月 奎(いづき けい)
37
十七条憲法をつぶさに読み解くこの巻は圧巻です。仏教や儒教を基本にして聖徳太子の理念を知らしめるための条文としたこの憲法は、太子の高潔な人格と為政者としての高い理念がほとばしります。しかしだからこそ太子は孤独に陥り、その血脈は立たれるのだと梅原猛は言います。それは悲しい真実でしょう。民を苦しめることを禁ずる条文があります。太子の息子の山背大兄王は民に苦しみを与えないために自死を選びます。それは太子の意志を守ったのだと思うのです。聖徳太子の清廉なる魂をわずかでも感じて、わずかでも心に留めたいと感じた読書です。2020/04/10
z1000r
6
非常に読むのに時間がかかった。かつ、かなりの飛ばし読みをした。儒教の話も多数出てきた。しかし自分には難しい。2022/11/23
鈴木貴博
4
第二巻。史上の太子評価の変遷、崇峻天皇弑逆事件の考察、朝鮮三国と隋帝国を巡る国際関係の動きと最初の隋への使節の派遣、小墾田遷都の意味するものとその場所、そして逐条検討を含む十七条憲法の考察。引き続き日本政治と太子を国際社会の動きの中に位置付けて見ていく手法に、従来の定説を覆す考察は刺激的で面白い。日本史全体に通底し、そして今にも通じる日本の文化、国柄を見通した十七条憲法の内容に改めて驚く。2020/10/31
Tai
3
十七条憲法を紐解き構造を明らかにし、聖徳太子の思考に至る展開、予想外にドラマティックで驚いた。 スサノオですら天皇の命に従わないと流罪になる、日本の礼はデモクラティック。聖徳太子はあの時代に民主的な思想を持っていた。 和と智が循環的な構造の中でつながっている事、和合で物事を決めていくことは、他者の言う事をそのまま受け入れるのではなく、合議によって検討する事で理を見出す事、和には智の研鑽が必要な事、太子が求める和には力強さがある。 2019/03/04