集英社文庫
花闇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 348p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784087475203
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

幕末から明治の初めにかけて一世を風靡した歌舞伎役者がいた。三代目・沢村田之助。名門に生まれ、美貌と才能に恵まれた女形として絶大な人気を博しながら、不治の病におかされて三十四歳の若さで逝った。進行する病魔と闘い、足を失いながらも舞台にたつその気迫。芸に憑かれた人気役者の短くも数奇な生涯を、同門の大部屋役者の目を通して情緒豊かにつづる長編小説。

著者等紹介

皆川博子[ミナガワヒロコ]
1930年1月2日生まれ。東京女子大中退。85年「壁―旅芝居殺人事件」で日本推理作家協会賞、86年「恋紅」で直木賞、90年「薔薇忌」で柴田錬三郎賞、98年「死の泉」で吉川英治文学賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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ヨーイチ

22
教えてくれた諸氏に感謝!一気読み。但し、味わったり、考えたり、思い出したりで減速の必要が有りました。歌舞伎に興味がある人、芸事の好きな人は必読と断言しよう。もう少し偉そうに言うと、御一新で(古いねどうも)一掃された芝居を偲べます。よく考えると、今やどんな偉い先生でも三代目田之助を見た筈は無いのだけれど、色んな聞き書き、言い伝え、資料などから、舞台、人物が頭の中に沸き立ってくる事が有るらしい。面白かったのは、劇聖九代目団十郎が悪役の様に扱われている事。九代目をこんなにこき下ろした文章は珍しい。続く2015/04/21

九鳥

19
本を読んで、久しぶりに血が沸いた。澤村田之助に材を採った物語は幾つか読んできたけど、中でもいちばん濃く感じた。田之助の人生を傍観し続けた役者「三すじ」の冷めていながら熱を帯びた視線に同調して、江戸歌舞伎の熱狂と終焉に立ち会ったような、呆然とした読後感。こういう本を読むと、同じ時代に生きた才能をもっと目に焼き付けないと!という焦りを思い出す。2009/12/22

木賊

10
名女形三代目澤村田之助を、弟子であり付き人(?)である市川三すじの視点で描く。若くして大成しながら、壊疽で四肢を切断し、それでも役者たらんとする執念と矜持。それが崩れ落ちていく様まで含め、澤村田之助の激しさが美しく、哀しい。私に歌舞伎の知識があればもっと良かったに違いないのだが、一度見に行ってみようか。2015/08/09

お萩

10
口に出して読みたくなる気持ちのいい文章がたくさん。読んでいてところどころ胸が詰まる。朽ちていく様も花のようで狂う醜さも愛おしい。芳年好きとしては予期せぬところで出会えて嬉しい。一番近いところにいる人間の目線、という書き方もかなり好きな部類で一気に読んでしまった。何を読んでもハズレのない皆川作品。いつも、踏み入ることのできない世界を覗かされ、それでも決してそこには行けないのでため息ばかりが出る。皆川博子の書いた田之助の、舞台が観たいなあ...2014/12/25

朱音

10
三代目田ノ助を扱った作品は他にもあるが、美貌と芸を兼ね備え一世を風靡した女形の悲劇と、ドラマチックになるしかない素材を同じ空間を生きた者の目から描いているのがいい。傲慢や我儘さえも美となる、そんな印象(そしてそこはかとなく淫靡な妖しさのある美しさ)がうまく描かれていて、江戸末期の雰囲気に酔いました。2009/11/16

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