出版社内容情報
江上 剛[エガミ ゴウ]
著・文・その他
内容説明
妻と障害を抱えた息子を殺し、自殺を図るも生き残った一人の男。複雑な家庭環境ゆえの無理心中として同情が集まる中、男は強硬に自らの死刑を望む。弁護を引き受けることになった長嶋駿斗は、接見を重ねるごとに、この事件への疑問を抱き始める。「愛しているから、殺しました」。この言葉に真実はあるのか。
著者等紹介
江上剛[エガミゴウ]
1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行。人事部、広報部や各支店長を歴任。銀行業務の傍ら、2002年には『非情銀行』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
94
【居場所】かぁ・・お陰様で私にはあったから今があるのだろうな。ダウン症だけじゃなく、障害の重さに差はあっても多分当事者なら一度は思ったのでは無いだろうか?この子と共に死んでしまおうと。この子を残して先に逝けないと。母親は産んだ自分を責めたことは無かったろうか(私はあった・・)ドキドキしながら噛みしめて読了した。個性だ特性だと受け入れるまで、きれいごとじゃない本音と現実が綴られていて苦しかった。死ねなかったから死刑にと願う父親・押川がこの先、手にかけた妻と息子を背負って生きる刑務所での10年は短いか?2016/01/06
ゆみねこ
91
重いダウン症の息子を持つ父親・押川透は、妻の依頼で病弱な妻と障害のある息子を殺害した。死刑にしてほしいと望む押川、弁護を担当する長嶋、障害を持つ子の親たちの現状を調べる記者の新藤。命とは、生きることの意味とは?重く辛い読書になりました。目を逸らしてはいけない問題を突き付けられた思いです。2020/01/21
miww
69
障害のある子を育てるという事についてここまで考えたのは初めてでした。妻とダウン症の息子を殺し無理心中に失敗した主人公は死刑にしてほしいと懇願する。家族3人だけで生きてきたが故に他の選択肢がなかった結果なのか。内に向きそうな環境だからこそ、多くの人との関わりが必要だったのか。弁護士と話すにつれ、押川は自分の本当の心に気づき始める。自分なら、と考えながら読み続けた。一生続く介護、息子の将来、壊れてしまった家庭、と思い悩む姿に心が重く言葉がない。2015/12/20
ちょろこ
50
ひたすら重かった…一冊。妻と障害を抱えた息子を手にかけた男。後追い自殺できなかった自分を死刑にして欲しいと依頼された弁護士。男の悲しい生い立ち、障害の現実、不安、叫びで埋め尽くされたようなページ。めくるたびにあなたはどう思いますか?あなたならどうしますか?と問われるような感覚にひたすら押しつぶされそうになった。もっと世の中の人にこの現状を知って欲しい、そんな思いでいっぱい。2015/12/02
さぜん
46
ダウン症の息子と妻を殺害し自殺を図ったが生き残り死刑を望む押川。知的障害を抱える親の苦悩や日本の社会制度など様々な問題を盛り込んでいる。もっと住みやすい社会にならないかと思うが自分の中に偏見や同情がないかと言えば嘘になる。私に出来る事は事実を知り知識を得る事。穿った目を持たない事。障害者だけでなく社会ではじかれる人が少しでも減るといい。2020/04/18