内容説明
友人、家族、世界、愛―すべてを置き去りにして、鬣の生えた少年スプリンター・成雄は、速さの果てを追う!!そこに何があった?何が見えた??―誰がいた。
著者等紹介
舞城王太郎[マイジョウオウタロウ]
1973年生まれ。2001年、『煙か土か食い物Smoke,Soil or Sacrifices』で、第19回メフィスト賞を受賞しデビュー。’03年に、『阿修羅ガール』(新潮社)で第16回三島由紀夫賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とら
44
成雄サーガ。講談社BOXの創刊とその後1、2か月のラインナップの中でも異彩を放っている表紙だったのだけどまずこの表紙の絵、舞城王太郎筆『麒麟飛行ノ図』というものらしい。うん自作。舞城は時々自分で絵を描く時があるのだけどそれがまた味があって良いんだ。で、この「SPEEDBOY!」は「山ん中の獅見朋成雄」に関連すると聞いたので発刊順にまず読んでからにしようと。それでついにこれを読めて、まずあれだ、スピードが尋常じゃ無い。スピードを追求してスピードをそのまま描いてる感じ。そして読みやすい。成雄の人生はまだ続く。2013/07/10
たぬ
22
☆3.5 主人公と基本設定はこれの1つ前に読んだ『山ん中の獅見朋成雄』と同じ。ただしこっちの成雄は姓がないことになってる。冒頭の段階で100メートルを5秒で走れるようになっている成雄だからすぐに400メートルトラックを4秒で回るようになるし、調布の甲州街道をひとっとびで横断は序の口で海面をも走る。白い球を追いかけたり巡礼のおばさんペアをウザがったり、でも友達の頭をもぎって平気なところはやっぱおかしい。2023/05/24
赤字
12
今作は毎回違う『成雄』が登場する、7つの短編で纏められている。言うなれば成雄短編集。同じ成雄サーガの『獣の樹』で「言うならば人間の姿形は意識が縛るんやな。」という台詞が出てくるのだがこの台詞が、この作品の根底にあるじゃないかと思う。自分は『天狗』と『犬』が好きだ。『天狗』に出てくる成雄は現代人っぽい所が好き。7つの短編を深く掘り下げていき、長編小説として世に出されたのが、『山ん中の~』や『獣の樹』の様な作品になるんだろう。2010/09/21
昼と夜
11
舞城の話は、社会の不条理とかどうしょうもなさにどう折り合いつけるかが根本にあると思ってるんだけど、ヤングアダルト対象っぽいし、手加減してくるだろうと思ってたら見事に裏切られました。全力でした。手厳しいな。『良いも悪いも同時にある。本当と嘘も混在している。そういうふうに世界はできている。そしてそんな世界に接している自分も世界に騙され、説得され、感化され、影響を受け、まるで世界の双子のように複雑化する。だから自分の中にいるのは優しい自分ばっかりじゃない。自分を騙そうとする嫌な自分もいる。悪い自分もいる。』2012/04/08
よっぷぃ@アイコン詐欺
9
限界というのは自らが嵌めた枷で、他者との関わりの中から生じる。限界を捨てる事で超絶的スピードを手に入れるが、それは他者との関わりを捨てる事と同義だ。孤独に依るスピードは厨二病的万能感のメタファとして捉える事ができるし、本当に必要な他者との関わりを得てアイデンティティを確立していく辺りが主題であろう。自己同一性を担保するものもまた、他者との関わりの中にしかないのだから。七つのパラレルな短編をもって、主題を浮き彫りにしていく手法はさすが。舞城はやっぱり、こういう一見すると訳わからん系のフィクションが好きだな。2012/05/07