内容説明
良人との離縁を望み最後の助けを求めて女が駈け込む「縁切寺」として名高い鎌倉の東慶寺。門前にある餅菓子屋の倅で忍びの未裔でもある平左十手の使い手・和三郎が、寺役人の野村市助、公儀御庭番の息女紀乃とともに、夫婦の事情の背後に隠された意外な真実を鮮やかに暴き出す。表題作「おねだり女房」を含め全四編。
著者等紹介
宮本昌孝[ミヤモトマサタカ]
1955年、静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部卒業後、手塚プロを経て執筆活動に入る。’95年、『剣豪将軍義輝』で一躍脚光を浴び、時代・歴史小説の旗手となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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baba
30
読メさんで知り、井上やすしの「東慶寺花だより」をイメージして手にするも、鬼畜を思わせる人物や殺伐としたシーンの連続、人を貶めている展開で読むのが辛く何度途中で止めようと思った事か。やっと最後に寺役人や門前の菓子屋の息子和三郎の温かさや人情が伝わって来た。2017/06/01
onasu
18
井上ひさしさんの「東慶寺花だより」が、雰囲気のいい作品だったので、こちらもどうかと手にしたのですが…。 表題作「おねだり女房」は、大店の天真爛漫な嫁が姑と諍いを起こす度に、東慶寺に駆け込んでくること7度。その度に舅と夫が迎えにきて、わがままを叶えてきたが、次には夫だけが現れて…、という趣向に富んだ小品でした。2017/04/11
タツ フカガワ
7
女性から離婚を申し出ることができる鎌倉の縁切り寺「東慶寺」の門前にある餅菓子屋の息子和三郎(じつは代々東慶寺守護の忍びの者)と、寺役人野村市助が関わる夫婦間のトラブル。できれば穏便に元の鞘に収まれば、と思うふたりの門前の風景はじつに穏やかだが、持ち込まれる離縁の背景はおどろおどろしい。そのギャップが面白い。なかでも最後の「雨の離れ山」は剣劇、恋路、ほろりとするところもあって、盛り沢山の一編でした。2017/10/25
rakim
5
あいかわらず女性たちの持つ事情は重いのですが、市助と和三郎のコンビネーションと解決の気持ち良さが読みどころ。単調ではない筋立てが巧いなあ・・と。宮本さんの未読の本がまだたくさんあるので読む楽しみがあって嬉しい。 2011/05/01
ikyo_01
4
1作目が買えずこの2作目から読む。 寺の御用宿というのがあったんですね。そして寺役人の仕事も。 市助さんと そのお人柄にほれ込んでいる門前の餅菓子屋の親子。「縁切寺」に駆込んでくる女の人の裏の事情を探り、とどろどろしたものにどっぷり浸かってしまう立場の割には 暖いものが感じられ、読後感が良かった。 1作目もぜひ読んでみよう。2010/04/03