出版社内容情報
洞窟の宗教とテラスの信仰と心の構造の関係 流動する光、具体像、物語。イメージの三階層である。新石器革命で抑圧された神話的思考を取り戻せるのか。映画を題材に対称性人類学で、10万年の精神史を読む
中沢 新一[ナカザワ シンイチ]
著・文・その他
内容説明
宗教と映画は同じ仕組みで、「心の野生」を開くイメージと精神の深いつながりを読み解く。「カイエ・ソバージュ」の新展開。
目次
プロローグ 狩猟と編み篭
第1章 映画と一神教―セシル・B・デミル『十戒』
第2章 映画はキリスト教である―ピエル・パオロ・パゾリーニ『奇跡の丘』
第3章 イメージの富と悪―ロベール・ブレッソン『ラルジャン』
第4章 家畜化された世界で可能な交通―クリス・ヌーナン『ベイブ』
第5章 洞窟の外へ―TVの考古学
エピローグ 哲学の洞窟とテラス
著者等紹介
中沢新一[ナカザワシンイチ]
1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、多摩美術大学芸術人類学研究所所長。人類学者。著書に『カイエ・ソバージュ全5巻』(講談社選書メチエ、『対称性人類学』で小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)『森のバロック』(読売文学賞)(ともに講談社学術文庫)、『哲学の東北』(青土社、斎藤緑雨賞)、『フィロソフィア・ヤポニカ』(集英社、伊藤整文学賞)など多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
7
愛と経済のロゴスなどで詳しく話された三位一体思考を、映画・テレビなどイメージメディアの読解に適応し、宗教と映画の構造的な類似性を明かしている。最初のイメージ群の三分類の解説が分かりにくいけど、一旦なんとなくでもつかめたらするする読める。後半のテレビ=家庭的な空間と、映画=秘儀宗教的な空間の対比からそのバランスの重要性を説くところなど穏当で分かりやすい本に仕上がっている。カイエソバージュ以後の各論的な著作2012/03/30
ダージリン
3
カイエ・ソバージュに続くものということで以前から読みたかった作品。映画好きなので、映画がテーマになっており大変興味深く読んだ。確かに暗闇の中で観る映画はどこか儀式めいている。映画も勿論幅が広いが、精神の古層と結びつく側面は確実にあるように思う。生身の人間が演じる舞台とは異なり、暗闇で映写された幻影を観るところは映画の重要な特質と思う。2019/11/29
mittsko
3
中沢思想は最近になるほど明快になっている 本書もそうだ、衒学的なレトリックは最小限におさえられているうえ、これまで彼が語ってきたことの総ざらいをする 「おそらくこうだろう」と考えてきたことを 中沢自らが明確に箇条書きにしてくれる 『カイエ・ソバージュ』(「対称性人類学」)の続編と位置づけられた本書があまりに明快なのは 「二分心」(J・ジェインズ)という70年代に出された人類学的仮説を まったく疑いなく受け入れているからだ 流動的知性と文節的知性の相即と相克という人類物語を映画/TV論に託して語る 面白い2015/05/19
eirianda
2
旧石器時代の宗教行為と映画が結びついて、自称映画好きのわたしも目から鱗。これから映画館で映画を見る時は心して観よう。似たメディアでもテレビはコミュニケーション、というのも納得。やっぱり、芸術人類学も読んだほうがいいかも。2012/11/01
志田健治
2
うろ覚えだけど、確かこれでパゾリーニとシュトックハウゼンを知った、かな。