内容説明
愛するものたちへの深い確かなまなざし。エスプリ溢れる辛辣で刺激的なエッセイ106篇(1993~97年)。
目次
手前味噌日記
「二千人の歯医者」と「瀟洒」
行列と哄笑
ワハハハ
インテリのOL
文章を書くことの困難
本屋の空間
父の娘
犬の眼の人
ジャン・ルノワールのジャガイモ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
13
最高であった。自らの愛するものを、そのよさを、魅力を、如何に甘美であり、如何に快いかを物語る際の、金井美恵子の言葉の素晴らしさ…しなやかで、艶やかで、強く、手強く、緻密であり、繊細であり、読む度にうっとりとしてしまう。重く、気怠く、色濃く、厚く。いつにも増して官能的で。凄みさえ帯び。読むと言う至福、立ちのぼって来るものの鮮烈さにめまい。表紙から楽しい。沢山詰まっていて、一つ取り出せばほかにも色々ついて来て、キリがなくなってしまったりもして、その一つ一つが蠱惑的で、それがすべて金井美恵子であるという楽しさ。2017/10/12
あ げ こ
12
〈物としての本の装丁という外側にまで、自分の書いた文章を反映させたい〉と言う著者の言葉を、読者は幸福として、本を所有する手の喜びとして、或いは本を見る眼の楽しさとして、勿論知っている。その装丁とタイトルの広がりをも含み楽しい一冊。〈あの、めちゃくちゃに甘美な楽しさと疲労と困惑とためらいと絶望と胸のむかつきと息苦しさ〉〈愛する小説と愛する映画を飲みつくしたいと欲望しながら読んだり見たりする渇きを含めた、書くことの快楽と疲労〉をよみがえらせ得る批評のなさや、〈父の娘〉として読むのではない幸田文と森茉莉の文章…2021/08/13
huchang
3
人の顔を覚えるのがわりと苦手なのもあり、映像よりは本を選んでいることがやっと最近になって分かった。もちろん、映画もドラマも好きだし、無職だった1年間は気合入れて古い映画をたくさん見ていた。なのだが、活字に比べたらそれほど必要としてない。これを読むと、映像に回帰したくなるから困るが、引退したときの楽しみが増えるなぁと嬉しくもある。そして、感想や批評を引っ張り出して好き放題に話ができる友達は、得難いものだよなぁとぼんやり。私は感想を言い合う代わりに、馬が合いそうな人のエッセイや書評を読むのかも。2020/08/22
きりぱい
3
文学関連の話題が占める中、映画の話題も多いと思ったら、映画評論の顔も持つ人だった。文学賞選考への言及や作家ならではの切実な?話、カッコの話などしつこいよー!面白いけど、と本当に重箱の隅をつつくように言い尽してくれる。アイリス・マードックは上手いけれど面白くない小説を書く人だとか、オースティンの心地よさは秘めやかな不滅性に輝いているだとか、特定の作家や作品へ寄せる好みも感じられ、結構辛口なのに鋭さが気持ちいい。京都だけに京大生の大文字の父には笑ったけれど、実はラカン派をよく知らない私も笑えないのだった!2010/11/04
minamimi
2
金井さんの本を読むと、書かれている本や映画を読んだり観たりしなければ、それも今すぐに!という気になる。久しぶりに再読。2020/06/18