内容説明
眼の壁に囲まれた密室、衆人環視の試合場での殺人事件から…。己の求める剣の道を選んだ男の悲劇。“風、風、風”の赤い文字。亡き陽子が遺した3文字の謎。第三十六回江戸川乱歩賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kirin
22
第36回(H2)江戸川乱歩賞受賞作。大学剣道の全国大会の試合中に起きた衆人環視の中の密室殺人。刑事を伯父にもつ大林京介は「風 風 風」という謎のメッセージを遺し一年前に自殺をした恋人との関連を疑い、調査を始める。数百人の観客の前、正に透明な密室で起きた殺人事件。剣道という舞台設定だからこそ使えるトリックはなかなか楽しめた。舞台が昭和50年代ということもあり、かなり古風だが剣道の考え方や武士道というものを感じることが出来た。若者たちの感情の揺れ動きが細やかに描かれ、とても丁寧に書かれた印象だった。2016/11/09
jima
18
第36回江戸川乱歩賞受賞作。全日本学生剣道大会決勝戦、観客注視の中での殺人。犯人も犯行方法もわからない。公開の密室。2014/12/30
KJ
2
剣の道は生きる道。剣道は競技の枠を超え人生に深い影響を及ぼす。時に命や愛よりも剣が上位に成り得る。不様な生を晒すより高潔な死を選ぶ。命より尊い道は存在すべきか。葛藤する生き様が凛とした緊張感を纏う。衆人環視の透明な密室。遮断された音声と表情。精神や技術や形式に渡る独自性。剣道の奥深い世界に惹き込まれる。心の深層に潜む痼り。憎悪は成長し殺意に変貌する。繋がる心技体。異なる経路から謎に迫る過程が面白い。極めた剣技の背後に巧妙に仕組まれた陰謀に唸る。現代の若者を描く推理小説が近世の武士を描く時代小説と共鳴した。2023/02/15
二分五厘
0
1991.7.21
半透明
0
そこそこ面白い