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講談社文芸文庫
青い小さな葡萄

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  • サイズ 文庫判/ページ数 217p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784061962125
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

1人の日本人留学生が霧の臭いのする町リヨンで遭遇した元ナチの兵士・ドイツ人神学生ハンツの謎めいた履歴。戦争への抵抗の美談に隠れた味方向同士の醜いエゴの争い、息づまる虐殺の歴史、目を覆うばかりの人間本能の崩れ。深い懐疑を抱きつつ、それにも拘らず“神”を求めさ迷う主人公伊原の心を鋭利な文体で追い詰め描く方法的実験。戦後初のフランス留学生だった著者の文学的原点を示す長篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ばりぼー

57
「白い人・黄色い人」の人種差別と神の救済というテーマを継承する氏の処女長編。大戦後、裁かれる立場にあったボッシュ(ドイツ人)とジャップ(日本人)との同病相憐れむ親近感と、肌の色の違いから生まれる差別意識とがネチネチと絡みあい、どよーんと憂鬱な気分に…。「なぜ神は人々が殺し合い苦しみ合う有様を黙って見ているのか」という問いかけは後の「沈黙」にもつながります。「青い小さな葡萄」とは負傷したドイツ人に恵んだ善意を象徴するもの。ちなみに、フランス語では「黄色い」は「疑わしい」という意味も含んでいるそうです。2015/06/21

優希

46
人と人の疎外、異人種であることのコンプレックス、裁く者と裁かれる者の憎しみを突き詰めていました。この心のあり方は周作先生の原点と言えると思います。2021/05/04

刳森伸一

7
日本人でいることに嫌気がしつつも日本人であることを意識せざるを得ない戦後のフランスで生きる伊原、戦争で片腕を失ったドイツ人ハンツ、収容所で非人道的な行為を受けたこびと、こびとの恋人で肺を病むエバ…境遇が異なるがどこか似ている四人の複雑な感情に目が離せない。後半の展開も胸を打つものがある。2018/06/18

桜もち 太郎

7
遠藤周作の初の長編作品。作者が戦後初の日本人留学生として、フランス・リヨン大学に学んでいたころの体験がベースとなっており、人種差別が大きなテーマだ。敗戦国として肌の黄色い日本人として、また登場人物の元ドイツ兵、そして収容所で痛ましい経験をしたポーランド人。彼らがフランスの抗独運動側にあった大量虐殺の事実を追い求めていく目的が常に問われている。遠藤周作の後の作品にも多くみられるように、「神」に対する疑念を持ちながらも、神を追い求める姿勢が見られる作品だった。重く深い小説だで遠藤周作の凄さを実感した。2014/08/29

AR読書記録

5
登場する人物が次々に示す、他者への憎悪や差別意識を連ねる冒頭からして、大変陰鬱な気分になること請け合い。差別を受ける原因とされる属性が大きな括りであるほど(例えば日本人とか、女とか、貧乏人とか)、一個人としてそれにどう向き合えばよいのか、対応することができるのか、など考えて、どんよりしてきます。戦争(で生み出される緊迫)状態では、一丸となって目指すべきもの(勝利)のために、異分子を許容しない、不寛容の度合いが高まるのだな、ということをしみじみ思うし、人間は愚かでそしてそこで沈黙する神の存在意義は一体...2018/05/15

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