内容説明
「目がくらむような出会い」と交遊―小林秀雄、中也、三好達治、桑原武夫、そしてスタンダールとの邂逅。混沌とした青春の放浪時代を出発点に、戦争・戦場・俘虜という“経験と意味”を確認すべく、図らずも小説家として世に出た文学的生涯。常に、文学、政治、全てに閃めく大岡昇平の鮮烈な“眼”。著者の小説・評論の原点と“志”を語る名エッセイ集。
目次
わが師わが友(青春放浪;わが師わが友;中原中也の思い出)
桜と銀杏(文学の運命を知る者;読書の弊害について;日記文学の魅力;折口学と私;水;フィリピンと私;桜と銀杏;8月15日)
わが美的洗脳(ゴッホの緑;音楽放浪記;わが美的洗脳)
わが文学を語る(歩哨の眼について;『野火』の意図;『レイテ戦記』の意図;覚書;わが懴悔;わが文学における意識と無意識)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
35
単なるエッセイだと思えば、タイトルほどの硬さは感じられない。大きく分けると、①戦前の文壇思い出話、②自作の解題、③戦後に書かれたその他の部分だ。遥か以前に夭折した文学者との逸話を語るのは文壇があるという幸せな時代のことであり、死後に全集が出る位の文学者だという自認がある著者によるものだ。反面、それは閉じた世界のお話で、現在の社会とは直接関係ないということでもある。②ざわざわしながら少し丁寧に読まないと『野火』が人工的に書かれていることが読み飛ばされてしまう。③では、折口信夫論やスタンダール論に注目したい。2022/12/20
ken
3
大岡文学のルーツ(小林秀雄や中原中也との出会い)や、作品創作の背景や自身の思い(『レイテ戦記』『俘虜記』『野火』辺り)などを綴るエッセイ。「エッセイ」といった軽さはなく観念的でゴツゴツした文体は分析的な大岡昇平らしい。この時点で多くの読者は遠ざかる。内容もマニアック。本書は大岡昇平ファンでない限り終始退屈を感じる一冊だと思われる。だって読メの感想だって1つもないないし。一応(興味深く)『野火』を(執念で)『俘虜記』を読了した自分でさえもほとんどついていけなかった。大岡ファンなら間違いなく楽しめるとは思う。2020/03/20
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