内容説明
エロ作家と自称する傍観者・峯三郎を小説の目に据え中国文化研究会のメンバー、情人蜜枝、マルクス青年守、桃代、支那浪人細谷源之助…。多彩な登場人物たちの3日間を切りとり、時間の同時性と野太い文体を駆使して貧婪無気味な人間探究を展開する。無限の苦悩と憧れの象徴〈中国〉を背景に混沌とした社会の肌を非情な眼で生々しく抉る戦後文学の記念碑的傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seer78
5
十数年ぶりの再読。1950年代の政治情勢が背景にあり、作家本人とその友人たちがモデルと思しき面々が「新中国」やら「革命」やらを語り合う、"政治私小説”という趣向。特に、複数の登場人物からの軍地=竹内好へのポレミークは読み応えあり。戦前の支那浪人の流れを汲む右翼大物の威圧感あり、台湾・国民党政府へのアプレ青年の渡航計画あり、アメリカ資本兵器工場(?)での毒薬投下事件あり、と賑やかだが、作品としては失敗作。主人公・エロ作家峯のキャラが立たず、恋人の蜜枝と女インテリ桃代(この名前がすでにアレだが)はやや類型的。2016/02/08
ゆずぴ
1
時代背景をさっぱり分からず読み終えたので分かってないままのような気がするけれどこの時代の雰囲気が面白くてつい読みふけってしまった。小難しいこと考えて大変そうでそれが楽しいんだろうなと思ったり。誰も彼もが殺しに加担してるんだって所とこの頃の左翼と今のそれとはずいぶん違うもんだなと言う所が印象的。2013/09/17
yunomi
0
そもそも、日本では人民主体の革命など成功した事は1度も無いのだから、この革命とテロリズムをめぐる小説は、誰も辿り着く事のできない「革命」を中心に、その周囲を彷徨する人々を描いた、模糊としたものにならざるを得ない。勇ましいアジテーションも、強烈な行動原理も欠いた世界では、男女の愛も決して成就する事なく、自堕落な性愛だけが重ねられていく。革命運動に従事する人々が、最も革命の本質から隔てられている、という逆説は後の全共闘時代まで引き継がれるのだった。2013/04/23
ヤマニシ
0
「僕が生きているかぎり、僕はきっとある種の殺人犯の片割れにちがいないような気がする。」(p156)2022/03/16