内容説明
さよは十五歳で、鷹匠長江周吾に嫁いだが、維新の朝敵となった会津は、過酷な戦場となり、周吾は御鷹部屋をさよに託して出陣する。身を裂く修練で鷹の野性に同化し、天空の殺戮を共に堪能するさよだったが―。孤高の鷹を愛し、悲劇の会津城下に、短い命を燃焼させた女を描く、凄艶、哀切な長編時代小説。
感想・レビュー
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Hiroki
2
文京区立図書館 戊辰戦争の会津が舞台・・・想像したストーリーとは全く異なる展開。ヒロインは他者の運命に殉じない、他者の定めた掟に従わぬ者として存在し、鷹を育む世界・暮らしを選択する。戦場となっている会津は町人や農民にも略奪・殺人が横行。そんな中で女として生きようとするヒロインを描こうとすれば、限りなく灰色の階調・グラデーションに沈みこませるのが一番と作者は考えたのだろう。愛した鷹の爪による死で物語は終わる。官能と伝奇、生と死を女性特有の肌理細やかな粘る文体でグイグイ押してくるから慣れるのに一苦労でした。2024/01/15
まぬけのまりこ
1
会津、怖い。そんなだから白虎隊とか、あたら若い命をーーーって全国各地の武士の子が切腹の練習する訳じゃないよね?覚めた視線で高揚感の欠片もなく、会津戦はつらい。某組の出番はなし。鷹を選んだ時はここからかと思ったのに。型にはめられ、踏みにじられ、失い、流され、けれど確かに生き抜いた。ある意味思い定めた一つにたどり着けたのか。2023/06/12
冬薔薇
0
幕末、会津戦争の世の渦に巻き込まれた十五歳の少女さよは、肉親を残酷な戦の業火に亡くした。野性の鷹を飼い慣らすことに生きる力を得て、雪深い山にこもる。鷹を失い、借金を背負い、維新後の東京吉原へ流れる。強い意志を持つさよも、この時代の流れに翻弄される。近代化へと突き進む時代背景の中、鷹を分身とした女の生き様を白、黒、赤、青の物語に鮮やかに描ききる。いつの作品も戦争の影が物語を作る。多彩なジャンルに敬服する。2013/06/30
ぱーぷる・ばんぶー
0
農村の娘が会津藩の藩主に仕える鷹匠に嫁ぐ。やがて幕末の会津戦争で出兵した夫の帰りを待ちながら鷹を訓練するが、会津藩は破れ…。著者がミステリーから時代小説へと移るころの作品。2020/08/26