内容説明
思索する前衛歌人の名を負う岡井隆。「アララギ」から出発した彼は、むしろそのリアリズムを徹底批判し、現代詩としての思想表現に努めた現代短歌界のオピニオン・リーダーである。本書については「特に私をめぐる覚書や場の理論については、歌論と作品の間に働く微妙な力働的関係にも注目して、柔軟にその本意を読みとってほしい」と岡井はいう。短歌を志すすべての人に希望と勇気を与える必携の書。
目次
歌との出逢い
短歌を志す人へ
危機歌学の試み
語彙と模倣
場について
詩型の叛意
定型について
韻と律
主題制作と連作
喩法について〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
太田青磁
21
新鮮な記憶として、脳髄に新旧各種の非日常語をたたき込んで、いつでも利用可能にしておく・はっきりとした定型意識と、その上に立った実践なくしては、定型から派生するいくつかの変種の価値を知ることができません・ある主題(たとえば愛、たとえば死)をめぐって、「連作」を試みるべき・短歌の場合、暗喩が方法であった段階から、技法である段階へと、徐々に、じりじりと移ってゆきつつある・元来この「事実に即して歌う」という方法は、見かけほど大衆的なやさしい道ではなかった・口語へ文語を継木するか。文語へ口語をとりいれるか。2016/07/31
ぼっせぃー
2
別のところで短歌の連作論なるものを読み、関連として手に取った作品。全体として時代を感じる、かなり大上段に振りかぶった口ぶりではあるが、三十一音や短歌定型という形式の限界と可能性について、歌人とはここまで真剣に考え尽くすものなのか。韻律的痙攣という歌人の捉え方も気に入りました。2019/08/27
すずちう
2
これが品切重版未定状態になっていることによる損失はめちゃくちゃでかいと思う。2016/01/14
h1_tz
0
「歌人が大衆と違うところは、言語生活の流れにときどき韻律的痙攣をおこさずにはおれないという習癖を持っているところである」 時代だなと思うけど、こういう自己規定の言葉を読むのは好きだな2023/08/19