内容説明
戦後日本の歩みに巨大な影響力を及ぼしてきた「アメリカ」。高度成長期のアメリカ依存の精神的構図を捉えた江藤淳の文芸評論『成熟と喪失』および一連の占領研究におけるその思想的道程の検証から「戦後日本とアメリカ」を問い直さんとする。原爆投下と無条件降伏をめぐる問題、占領下の新憲法制定経過など、戦後の原点となった事実を精細に論考した野心作。
目次
「アメリカ」の影―高度成長下の文学
崩壊と受苦―あるいはフロンティアの消滅
戦後再見―天皇・原爆・無条件降伏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
17
左右の立ち位置の違いはあるものの、概ね最も正統な江藤淳「成熟と喪失」の継承であり、優れた江藤論でもある。江藤の占領期研究を支えた情念とロジックを丹念に追い、検証を重ねていて、批判的でありながら共感的な深い読みをしている。江藤のナイーブさがアメリカの影にあまりに深くとりつかれていることを指摘、その単純な治者への回帰、父性的成熟モデルを批判し、むしろ高度成長で自ら失った自然に寄り添い再生を模索する道を示したのは興味深いが、むしろ加藤自身が後に江藤的な成熟テンプレに回帰したことの方が面白い2014/04/13
iwasabi47
2
再読。天皇の威光と原子爆弾の威力。『敗戦後論』も読み返すかな。2019/06/29