内容説明
誰にも見えないものが見え、ありえないことを体験してしまう「不思議体質」の君枝。そんな孤独な心を、幼なじみの陸をのぞいては誰もわかってくれなかった。でも、あの頃の二人は、お互いの大切さに気がつかなくて―。少女から女へとつづく、幻想の海原を漂いながら、見失ったのは、ほんとうの愛。哀しみの向こう側を、きらめく才能が描いたラブストーリーの新しい波。
著者等紹介
梨屋アリエ[ナシヤアリエ]
1971年、栃木県小山市生まれ。東京都在住。98年、『でりばりぃAge』で第39回講談社児童文学新人賞を受賞し、翌年、単行本デビュー。2004年、『ピアニッシシモ』で第33回児童文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひめありす@灯れ松明の火
35
今にもなくなりそうなのにとても綺麗で、幸福なのに決して救われてなさそうな、誰かと手を繋ごうとしているようなのにそっと手を振っているだけのような、そんな儚くも美しい表紙にやられて手に取りました。出来る事ならちゃんと病院行ってカウンセリング受けてー、学校の付属のカウンセリング室でもいいからー、と現実的な私が叫ぶ一方で、君江と一緒にその不思議な世界に沈んでいる自分がいて、とてもアンビバレンツな感じでした。メリーポピンズの様な男ものの傘のエピソードが、ほのぼのとして可愛らしくて好きです。ハッピーエンドがよかった。2011/11/08
ベイマックス
28
(図書館本) 文庫本と違いハードカバーは、裏表紙にあらすじもないし、解説もないから、読むまで内容の予備知識がない。しかも、作者初物。 摩訶不思議な話を読んだことがないわけでもないし、でも、最後まで物語の世界に入り込むことが出来ずに、文字だけを読んでいたような感覚だった。 言葉の選択やリズムなど、色々なことで、合う・合わないが生じるのだろうな。2020/02/16
かごめ
16
不思議体質のヒロイン君枝は時折イリュージョンの世界に迷い込む。君枝のイリュージョンを理解し、そこから解放させたいと支えてくれる男友だちは、それゆえにか距離を置く。溶けてはしまうのに、その隙間に雪が降る。夢なら覚めなければよいのに、覚める夢ならみたくない、夢であっても夢みたい。一人になってもスノウティアーズの涙の池を泳ぐ君枝。溺れることを夢見ないのだろうか。2017/09/07
zanta
11
既読か?未読か?表紙はなじみがある気がして、読んだことがありそうだと思いながら借りたが、未読だったようだ。何度も手にとってはチラヨミして、読まなかった模様。私自身はこういう不思議体験は皆無だけど、こういう事象を想像してしまうのが作家という職業のかたなのだろうな。それは目先のことにとらわれてしまうより心楽しい生き方にも思われる。陸がどうなったか、とても納得できない(気に入りだったので)が、了さんとすれ違いながら不器用に生きていけばきっと幸せになれるんじゃないかな。2014/10/30
氷風
11
あっ。またこの不思議な世界に迷い込んでしまった…。ファンタジーと楽しく割り切れたらいいんだけど。梨屋作品は、ビターなファンタジー。君枝のような世界だったらちょっとは楽しいかもと思いつつ、ずっと続いたら気が滅入るだろうなぁ。陸との関係がちょこっと甘酸っぱい。というより、陸の一途な感じ、見守る感じがすごく優しい。でもすれ違っちゃって。あぁ。きっとこの2人が合わさったなら、少しは生きやすかっただろうに。2013/02/08