内容説明
春の名残が漂う頃、「左近」の長男・桜蔵のもとに黒ずくめの男が現れて、「クロツラを駆除いたします」という怪しげな売り込みのちらしを置いていった。数日ののち、離れに移ってきた借家人の骸が押し入れから転がり出た。そこへくだんの男が現れて言うには、クロツラに奪われたタマシイを取り戻せば息を吹きかえすと…。魂を喰う犬を連れた男、この世の限りに交わりを求める男、武蔵野にたたずむ隠れ宿「左近」の桜蔵を奇怪な出来事が見舞う…。夢と現が交錯する蠱惑の連作小説シリーズ第二作。
著者等紹介
長野まゆみ[ナガノマユミ]
東京生まれ。女子美術大学卒業。1988年『少年アリス』で文藝賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
86
展開は前作と同じですが、やはり美しい雰囲気が漂っています。左近の手伝いをすることになった桜蔵は、より妖たちに魅入られるようになったのではないでしょうか。真也という少女との淡い関係も見られますが、桜蔵は悪態をつきながらも柾に気があるのかなと思わされます。続編があるような終わり方が何とも言えない余韻を残していました。桜蔵が何故妖を引き寄せるのか、出生の秘密を知りたい気もします。2015/11/04
しゅてふぁん
39
今巻も四月から始まり季節を感じることができる一年間の連作短編集。桜蔵が巻き込まれて柾が助け出す、テンプレだと言ってしまえばそれまでだけれど、それが好き。特に春、桜の季節の描写が幻想的でお気に入り。さすがタイトルと主人公の名前が‘さくら’だけのことはある。読み終わった後、また前巻から読み返したくなった。続きも出てるし楽しみだな。2018/11/11
ううちゃん
28
相変わらず、死人にせまられまくる桜蔵。こういうのが苦手な方はスルーしてください。お約束のいきなり唇をのせられるのが、私のツボである。どの短編も艶っぽいが個人的にはもう少し先まで読ませていただきたい。いや、書かないからこそよいのかもしれないが。そうはいってもちょっとマンネリかな、と思うとスッと色っぽさが増す描写があり、つい読んでしまう。そして柾との関係が気になってしまうラスト。2018/03/10
響
25
桜蔵は前巻以上に、この世ならざる様々なモノたちからの接触を受けていました。紫苑の花言葉「故人を思う」にまつわる話が印象的。千菊が雪虫のことを妖精だと言うシーンは可愛かったです。2013/03/21
うららん
18
シリーズ2作目。今回も死人(男)と情事を交わす桜蔵。友人の久生と弥はどうかなるのか。大学へ進学し柾との生活はどうなるのか続きが気になる。★★★☆☆2018/02/15