感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Roy
23
★★★★+ 蜉蝣《かげろう》とは《ふゆう》とも読むそうで、《ふゆう》と言われるとふわふわと浮いている霊魂を連想するのだけれども、そんな愛らしいものでは全く無く、言うなれば奈落の底で救済を懇願する生霊(本来奈落の底にいるのは悪霊だと思うが生霊の方が生々しい気がする)、そうは言うものの蜉蝣は不完全変態の虫であるし、成虫になると美しい透明な翅を持ち、その翅を気の済むまでふるわせるわけにもいかない儚い一生を終えるのであるから、その悲哀な壮絶さも相俟ってか、底で蠢く生霊すらも美しく、時には滑稽に感じてしまう。2009/05/01
光芽様
12
★★★★☆読んだ後に失神してしまいそうだった。後味がキムチを食べた後の様だ。 痛くて、切なくて、汗を握る卑猥な…話。 幸せとは…そんな基本的な哲学を模索している自分がいた。 自分にとって究極の人に抱かれる事は何よりの幸せ。究極の人は死ぬ時は違う人かもしれないと言う事と究極の人を間違えてはなりませぬ。と、そんな事はどうでもいいとして〜この本を読んだ後、酒を飲みたくなった。余りにも悲しくて。狂おい酒。 2009/03/15
TKK
9
少し前に読んだ本の解説に「半分死んでいる日本語を使うことによってその時代の風景に溶け込んでいく」というくだりがあった。この小説も正字正仮名遣いが用いられ、また文体からも昭和初期の匂いが立ちのぼり、あたかもその時代に遡り流行小説を読んでいるような錯覚に陥り、古い上野、浅草、谷中の街並みが懐かしく感じられる。本作には実在した責め絵師伊藤晴雨のモデルをつとめた女性が描かれている。読むだけでも痛くて辛いが、官能的な芸術品であることも理解できる。(再読)2014/11/04
tomo*tin
9
この激情の交差について読者である私が語るべきことは何も無い。語りたくとも語りえない。どのような形であれそれが愛だというのなら、きっとそうなのだろう。そこでは禁忌も官能も物語を飾る道具の一つでしかなく、読者は作法を知らぬ傍観者なのだ。物凄いものを読んでしまった。若合春侑、恐るべし。2008/12/24
星落秋風五丈原
8
昭和初期の東京。カフェの女給の帰依は、上野の美校で裸体モデルをしていた。野獣性を秘めた学生達、謎めいた絵葉書屋、緊縛絵の画家・愁雨との出会いで、帰依の人生は思いがけない方向にねじれていく…。2013/04/29