内容説明
江戸の武士から庶民まで、時代を彩った多彩な生活の場面を、人々の愛用した和本から読み解く。和本のうち、活字になっているものは文学を中心にして1パーセント足らずであり、活字にならなかった多くの本にこそ、江戸に暮らした人々の生活が見えてくる。江戸文化の様々な局面を、動物、賭博、易占、言葉遊び、印譜、春本、武家作法などに関する和本から照射する。豊かな文化を見つめ直すための格好の案内書。
目次
生き物
見立て生花
通俗易占書
博奕
見本帖
言葉遊び
戯作
遊里案内
諸職
食餌
武家作法
人名録
印譜
邦人法帖
書画展観目録
画譜
寿会詩集
狂詩
わ印
写本
自筆稿本
著者等紹介
中野三敏[ナカノミツトシ]
九州大学名誉教授。江戸の小説、戯作研究の第一人者。「新日本古典文学大系」(岩波書店、全一〇〇巻)の編集委員。主著に『戯作研究』(中央公論社、角川源義賞・サントリー学芸賞)、『近世子どもの絵本集』(岩波書店、毎日出版文化賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きさらぎ
4
『江戸の板本』でも思ったが、とにかく文章がいい。そして書物愛がいい。和本の豊穣の海を自由に泳ぎ回る筆者を、ああ楽しそうだなあと浅瀬に立って眺めているような。象の話、鼠の話、遊里の品定め、食の話、印譜、わ印、武家作法。1話1話は短いが、その分バラエティに富んでいて、ソフトカバーの手軽さもあって、通勤中に空き時間に気楽に楽しめるのが嬉しい。ラストには附録として、和本の海にダイブするための手引き書を収める。こっちにおいでよ、という氏の声が聞こえる。まだ間に合うだろうか、という不安を通奏低音のように響かせながら。2016/08/18
takao
1
ふむ2022/05/11
Kazuhisa Hirao
1
中野先生二冊目読了。こちらは江戸期の和本、それも希少本の紹介。何でも有りの江戸出版物ならびに中野先生の蘊蓄ひけらかし本である。まあ、軽快な語り口で嫌みさは薄まりますが。 いろんな分野の和本が紹介されているので、自分の興味があるところだけ読み散らかそうと思ったが、ほとんどが興味のある分野なので已んぬる哉であります。2012/01/15
Wataru Hoshii
1
鼠の飼い方、指紋占い、博打指南、春本。江戸時代の和本の海は確かに豊穣だ。学問が西洋化することで失われた「和本リテラシー」(変体仮名と草書体漢字)の復権が必要という著者の主張には大きく頷く。でも、意外と後半が辛かった。印譜とか法帖とか、おそらく著者が一番面白いと思っているジャンルにはなかなか興味がいかない。まだまだ教養の浅いワタクシでした。2010/02/26
さんとのれ
0
目録、マナー本などの実用書から博打、パロディー生け花などのお遊び本まで。江戸の人の旺盛な好奇心とユーモアのセンスは興味深い。一線は超えないという暗黙の了解のおかげで、はじけているようでいて品を失わないのもいい感じ。2014/01/22