内容説明
短歌とは、呼吸を伝え合う形式ではないか。この数年、その大切さを改めて実感する。日々の移ろいのなかで発せられる自然な息が、この歌集には宿っているか―。「西行の息づかい」を現代へと願う著者の第五歌集。
目次
1(紅花あぶら;ある日の桜 ほか)
2(火祭りのあと;霜月の空 ほか)
3(リトグラフ;空椅子 ほか)
4(鼻ぐり塚;飛行船とたんぽぽ ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はち
4
『燕麦』の前の歌集。最初に感じた違和感はすなわちこの歌集の特徴でもある。一つ目は職業詠の多さ。吉川さんが仕事中に怒っている姿を私はうまく想像できない。二つ目は子供達の歌の多さ。当然成長するから、自作よりは子供との関わりも多くなる。少なくとも交差点はこの歌集にはまだ、ない。三つ目は身内への挽歌。細かいところに目を向ける視線の鋭さは初期から何ら変わらない。2015/10/16
浦和みかん
3
作者の他の歌集と比べると堅くて理屈っぽい歌が多いか。詠いたいことが強いのかもしれない。初期の口語のはずし方や歌の若さ、近作の理屈は通りながら柔らかさのある歌を思えば、その変遷としても興味深い。2018/06/06
toron*
1
ぶら下がるような梅雨空 少年が滑り台から見ていた空だ 蝶はいつも風の先端にいるんだよ雨滴の光る朝の畑 薄白く夜の舗道を覆いいるどれもどれもが桜の部品 逃げてゆく時計の針を眼で押さえつけたり朝のタクシーのなか 川の面に雨残りつつ神々の輪投げのようなゆうぐれが来る まだ吉川さんの歌集を全部読んでいるわけではないけれど、『石蓮歌』の次に好きな歌集かもしれない。また「~のような夕暮れ」という比喩を吉川さんはよく使うと改めて感じた。歌集をすべて揃えたときに改めて並べてみたい。2020/08/15
kei
0
☆☆☆2010/02/01