内容説明
花やかな風貌,精悍な体躯に恵まれたAは、俳優になった。順調に俳優生活を続け、俳優業がこれから地に着き、拓けはじめようとした矢先、Aは生地の国へ帰り、山奥の病院へ入った。Aは完全にこちら側の人間ではなくなった、「この海峡を渡らなきゃァな。渡ってむこう岸へ着かなきゃ、出世ができない。餓鬼の頃、海峡を見るたびにそう思ったものさ」と下の盆地を眺めていう。ここにも、そこにも海峡がある。青い海色の遊び着きて、うなじのうしろに野性の馬が疾駆する地ひびきを飼いながら、思いつくままに、海峡を語る幻視行。第12回泉鏡花賞受賞作品。



