内容説明
快適生活を送るには、鈍な自己愛とお金が必要!?ヘンな人間のカタログのように強烈な個性の人物達が交錯し、「目白四部作」の桃子や小説家のおばさんも、ギャフン。思わず吹き出すイロニーに満ちた連作短篇小説。
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
1947年、群馬県高崎市生まれ。群馬県立高崎女子高校卒業。67年「愛の生活」が太宰治賞次席となる。同年、現代詩手帖賞受賞。79年『プラトン的恋愛』で泉鏡花文学賞受賞。88年『タマや』で女流文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コットン
57
本文より、巻末の著者へのインタビユ―が面白い。→『快適生活研究』は、誰も感動できないタイプの小説になっているわけですね。「この意地悪な言い方は嫌だ」なんておもしろがっても、感動するとかいう要素はまるでありません。書きたかったのはそういう「ちょっと気になる憎たらしい言葉を言ったり言われたりしている生活上のやりとりの細部」っと。2017/09/03
ユメ
33
普段私がほとんど読むことのない作風と言えるけれど、これが自分でも意外なくらい楽しめた。蜘蛛の巣のようにもつれた人間関係(ああ、今度は人物相関図を書き出しながら読み返したい!)や、その登場人物たちが互いに批評し合っている感じが、人間観察の面白さに満ちている。作者が「嫌な人間のカタログ」と言っている通り、鼻持ちならない人間が多いのだが、皆不思議と憎めない、と私は思った。もっとも私は痛烈に批判されている「快適生活」にも惹かれるところがあるので、作者や桃子からはフンッと笑われるような鈍な人間であるに違いない。2018/07/04
rinakko
12
最後に文庫版特別インタビューを読んで、思わずにんまり。未熟で鈍感な自己愛による慢性的な幸福に陥った人たちの“憎々しいおかしさ”に、いらっ…としながらわらいつつ読むのが堪らない。(“おちこぼれ系”のおばさんや桃子たちがやっぱり好きだー)2015/12/21
rinakko
7
再読。目白連作の短篇集、面白くてつい読み耽ってしまう。未熟で鈍感な自己愛を持ち、慢性的な幸福に陥った人たちの “憎々しいおかしさ” が、これでもかと絶妙な按配に描かれていて堪らない。とりわけ、長々しい手紙を書く癖(ヘキ)をお持ちのアキコの造形には引きこまれた。(“おちこぼれ系” のおばさんや桃子たちは相変わらず)2024/04/23
きくりん
7
イライラする人たち、近くにいたら確実に避けたい人たちだけれど、こうやって書かれた文章を読むだけなら、ついついイライラするために読んでしまうんだな。裕福で鈍感な自己愛の人たち、でも他人をうらやんだり嫉妬したりしないで自己完結しているから本人たちはある意味幸せなのかもしれない。2013/09/03