感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
6
最初は武士の娘が働くなど政府の肝いりで待遇や勤務内容が良かったが、早くも紡績産業が拡大する中で、職場環境は悪化していった。中々悲惨な話が多い。今も似た状況は生じているだろう。2015/07/31
hyena_no_papa
3
この本の終わり近くに象徴的なことが書いてある。「アメリカに生糸を売って、その金でクズ鉄と重油をもち帰って造った日本海軍の象徴は消えた」。昭和20年4月7日午後の戦艦大和の轟沈についての著者の所感である。明治維新以後様々なものを外国から輸入するためには、我が国の特産品を輸出して外貨を稼がねばならなかった。それが絹と茶。長野県岡谷にあった製紙工場へ飛騨の少女たちは険しい野麦峠を越えてゆく。工場での過酷な労働の結果、身体を害し命を落とすものすらいた。筆者・山本茂実氏は丹念に取材を重ね、記念碑的な作品に仕上げた。2019/08/03
くりりんワイン漬け
3
昭和43年というネットのない時代にここまでまとめあげられた資料(論文といってよいのだろうか)は、とても貴重である。こういうものを歴史教科書で取り上げるべきである。正直貧富の格差なんていうきれいごとではなく、人を豚としてあつかう人間のいる時代。本当に胸糞が悪くなるとても素晴らしい資料です。このような資料を大切に皆に読んでいただきたい。2015/02/05
もだんたいむす
3
図書館本。小説だと思ってましたが、違いました。中々、悲惨な話でした。当時の社会情勢なども説明されており、分かりやすく読みやすかったです。当時の民間の製糸工場は、大変劣悪な環境だった事が分かりました。★★★★☆2014/04/27
くにお
1
明治から昭和にかけて「富国強兵」の日本を支えた生糸産業に従事した貧しい農村(主に飛騨)出身の女工たちの悲惨な現状を丁寧に取材し、文学的情緒たっぷりに描いたノンフィクション・ルポタージュの古典的作品。主な舞台となった長野県岡谷の古本市で購入。映画では描かれなかった昭和初期の労働争議の章が強烈に悲しい。抑圧・搾取された工女たちがついに立ち上がり、会社側に待遇の改善を求めてストライキを行うが惨敗。権力側が圧倒的弱者に対して悪質なデマを流すなどして団結をなし崩していく様は今でもよく見る光景。2017/05/08