出版社内容情報
父の数少ない知り合いたちから拾い集めた記憶、やがて自身の内からよみがえる記憶──果たして父は、どんな父親になりたかったのだろうか、洋一郎の思いはあふれる。『流星ワゴン』『とんび』に続く、父から息子へと受け継がれる感動の物語。
内容説明
老人ホームの施設長を務める洋一郎は、入居者たちの生き様を前に、この時代にうまく老いていくことの難しさを実感する。そして我が父親は、どんな父親になりたかったのだろう?父親の知人たちから拾い集めた記憶と、自身の内から甦る記憶に満たされた洋一郎は、父を巡る旅の終わりに、一つの決断をする―。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て執筆活動に入る。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞、14年『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。小説家として次々と話題作を発表するかたわら、ライターとしても活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
279
新型コロナウィルス対策購入シリーズ第22弾、上・下巻、700頁強、完読しました。色々と考えさせられる幾つもの父・息子の物語、「人生は勝ち負けでない」そんな気持ちにさせられる佳作でした。本書で 「ひこばえ:木の切り株から若い芽が生えてくること。」という言葉を憶えました。 https://book.asahi.com/article/13208274 コロナ禍の四月は、本書で読了です。2020/04/30
ウッディ
156
樹の切り株から生えてくる若芽を表す「ひこばえ」、音信不通だった父の死をきっかけに知り合った人々との絆、母や姉が語る父の思い出、父の存在と残してくれた温かい記憶はひこばえのように、次の世代の礎や栄養となって行くような気がします。父に反発していた姉の涙、神田さんとの別れのシーン等泣き所も多かったけれど、老成する人を干物に例えるピント外れのライター真知子さんの言動に癒されました。ベンチに一人座る上巻と多くの人が集う下巻の装丁にも、重松さんの「ひこばえ」に対する思いが込められている気がしました。面白かったです。2020/08/15
とん大西
132
かー!泣かされちまいました。泣かされっぱなしでした。親の思い、子の思い。父の葛藤、息子の戸惑い。「苦労やら気兼ねやら、ぜーんぶひっくるめて、幸せな人生じゃったよ」…喪失と再生の終着地がおぼろげに見えだした時に放たれる言葉は継いでいく者の心奥に優しく静かに響いていく。ちょっと爽やかで、でも、切なくて、もどかしい。読了した今、色んなものがこみ上げてきて多くを語ることができんょ…。ふるわされましたぁ(^_^;)2020/04/26
ゆみねこ
110
木の切り株から芽生える若い枝・ひこばえ。父の来し方を知人たちから聞かされ、息子である自分を取り戻した洋一郎。老人ホームの入居者・後藤さんとの関わりも含めて、家族を捨てた父と残された家族の和解と再生の物語でもあるのかな。小雪さんの「思い出は身勝手なものに決まっている」、母の「思い出を勝ち負けで分けたらいけん」どちらの言葉も胸にストンと落ちます。お薦め本です。2020/03/30
kotetsupatapata
105
星★★★★☆ 中盤はどうしても中弛みしましたが、ラストまで一気に読み進めました。 自身の老い、老親の看取り、墓の問題等これから小生に必ず訪れるであろうストーリーで、読後深く考えさせられました。 小生の父親も目立った活躍をした人ではありませんが、定年まで会社員を勤めあげ、家族を養って育てた事に静かに感謝と尊敬の念を捧げたいです。 だから後藤氏も卑屈になる事など一つもないし、そんな事でウジウジしていたら佐山さんにぶん殴られるわ😩 小生も美味しい干物になりたいものです✨ 2020/06/03